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ぶそしき! これから!? 第1話 『ハジメテ』 1-3 「あ、あはは……」 「なに笑ってんだよマスター。あ、そうだ!」 乾いた笑いをしているマスターに、さっきまで悔しがっていたヒイロが呼びかける。 「あ、なにかな?」 「この武装パーツ気に入ったらからさ、買ってくれよ!」 ヒイロは胸を張って自身の格好を見せる。 ヴァーチャルバトルで傷ついても、リアルには反映されない。 始めに試着した時のまま、レイディアントアーマーは磨かれた鏡のような輝きを誇っている。 その手に持つレーヴァテインも当然、その切っ先は折れていない。 「う~ん、そうだなぁ。よく似合っていたし」 「そうだろそうだろ。それにオレ素体だけの状態だったから、武装が何もないし」 友大は腕を組んで悩む。 (ヒイロとそのクレイドルを買うだけで、今まで貯めていた分をほとんど使っちゃったんだよね。でもあんなに必死だし。幾つかの武装パーツくらいなら、今月のマンガやおやつとか、あきらめればいけるかな……?) ふと、今ヒイロが装備しているものの値札をしっかりと見ていなかったことに気づく。 「すいませーん」 「はーい、なんでしょうか?」 友大は近くにいたセラフィルフィスを呼び寄せる。 「今ヒイロが試着している武装っていくらですか?」 「マスター!」 ヒイロの顔が輝く。 「そうだね、レイディアントの黒一式とレーヴァテインだから、合わせてこの位になるよ」 電卓に武装の金額を打ち込んで見せてくれる。 「え」 その額を見て、思わず声をあげる。 「合わせてこの位になるよ」 電卓に表示されている金額を言う営業スマイルのセラフィルフィス。 「……」 「……マスター?」 黙り込むマスターをヒイロは怪訝に見る。 「ごめん、ヒイロ」 「ま、マスタ~」 顔を伏せて謝る自身のマスターに、ヒイロは情けない声を出してしまう。 「な、ならせめて! せめてレーヴァテインだけでも……!!」 「レーヴァテインだけだと、このお値段だよ」 営業スマイルのセラフィルフィスが、すばやくその値段を告げる。 「……」 「……ま、マスター」 再び黙り込む自身のマスターを、ヒイロは不安げに見る。 「…………………………ごめん」 「ま、ますた~~」 沈痛な声に、ヒイロは再び情けない声を出してしまう。 ■ ■ ■ 「……」 「ひ、ヒイロ……」 「……」 あの後、ヒイロが試着していた武装パーツを返却した友大。 ショックでいじけてしゃがみこみ、のの字を書いているヒイロへの対処に困り果てる。 「そ、そういえばさ。セラフィルフィス」 困り果てた友大が、現実逃避するかのようにセラフィルフィスに質問する。 「武装神姫の武装パーツって、プラモのとかと比べてすごく高いんだけど、なんで?」 「リアルバトルでも使えるよう、良い素材を使っているのもあるよ。実際に動いたり飛んだりとか機構が入っているパーツは、当然その分高いんだけど――」 セラフィルフィスが例として、ストラーフやイーダなどの神姫のリアのアーム、アーンヴァルやアスカのフライトユニットなどを出す。 「リアルバトル、ヴァーチャルバトルのどちらでも設定された機能を発揮できるよう、神姫の武装パーツにはデータチップが仕込まれているんだよ。見た目特に機構がないパーツも割高なのは、そのせいだね」 「そ、そうなんだ。ありがとう、セラフィルフィス」 「どういたしまして。頑張ってね、新しいマスターさん」 今度は営業スマイルではなく、見守るような微笑みをかけてセラフィルフィスが立ち去る。 ■ ■ ■ 「ひ、ヒイロ。今度おこづかいが出たら、何か買ってあげるから」 「…………約束するか?」 「あ、ああ。……あ、さっきの装備を全部は無理だけど、ひ、1つは買ってあげるから」 「……絶対?」 「ああ! 絶対買ってあげるから!」 「……」 「……」 「……分かった」 ■ ■ ■ 「「ありがとうございました」」 何とかヒイロの説得に成功した友大が店を出る。 その際に星原店長から、ヒイロをいきなりリアルバトルには出さず、ヴァーチャルバトルで経験を積むよう忠告を受ける。 「――あ、夕日だ。思ったより長くいたんだなぁ」 紅い夕日が友大とその神姫を照らす。 「そう言えば、マスターの家ってどんなんだ?」 肩に乗ったヒイロが自身のマスターに尋ねる。 「ここから自転車でしばらく走ったところにある一戸建てだよ。そういえば――」 「なんだ? なにかあるのか?」 「――いや、なんでもないよ」 ふと気づいたことを呟きそうになったが、寸前で止める。 (家に戻るのに、1人じゃないのは久しぶりだ……) 騒ぐヒイロをなだめながら、少し感慨にふける。 ■ ■ ■ 「ダンボールだらけだなー」 家に入るなり、ヒイロがそんなことを言い放つ。 「引っ越したばかりで取り敢えず、すぐに使うものを出しただけだからね」 「そうなのかー」 肩から降りて、ダンボールの中を覗いたりなどするヒイロの姿に、友大は思わず苦笑する。 (あ……) ヒイロの姿を見て、ふと思いつく。 「ちょっと、ヒイロ。そこで待ってて」 「なんだよ?」 怪訝げにだが、急に部屋を出ていった自身のマスターの言葉通りに、ヒイロは待つことにする。 「え~と……あ、あった!」 自分の部屋に戻り、家庭科で使っていた目的のものと自身の赤いTシャツを、ダンボールから取り出す。 「葉々辺さんのクラハみたいなのは無理だけど……」 友大少年は、ふと昨日今日と出会った神姫達の姿を思い起こす。 「これなら、僕でも」 断ち切りバサミでシャツの袖を細く切り取り、長細い布切れにする。 「ヒイロ、ちょっとこっちに来て」 「? なんだよ」 自身のマスターに呼びかけられ、近づく。 「そこでいいよ。そのまま動かないでね」 「?」 自身のマスターの手によって、ヒイロの首になにか巻かれ、結ばれる。 「僕からのプレゼントだよ。どうかな?」 ヒイロは自身のマスターが持っていた手鏡に映った自身の姿を確認する。 「――あ。か、格好いいよ! ありがとうマスター!!」 何かのヒーローのような赤くて長いマフラーを身に付けた自身の姿を見て、ヒイロが大はしゃぎする。 「良かった」 思いつきに大喜びをする自身の神姫の姿を見て、友大は自身の心が温かくなるような感じを覚える。 「僕は子どもで、お金がなくてろくにパーツを買ってあげられない。きれいな服や格好いい武装パーツを作ったりなんでできないけど――改めて、これからもよろしくヒイロ」 友大が自身の神姫に向かって手を出す。 「何言ってんだよマスター。こんな格好いいの、プレゼントしてくれたじゃないか。 うん――改めて、これからもよろしくマスター」 ヒイロが自身のマスターの指を両手で掴む。 胸が熱くなるような感覚を覚える。 (うん、良かった) 胸中にそんな思いが過る。 ――――To Be Continued☆ ――ヒイロの武装データが更新されました。 ウェポン:なし ヘッド :なし ボディ :なし アーム :なし スカート:なし レッグ :なし リア :なし シールド:なし アクセ :赤いマフラー 前へ / 続く トップページ
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注意:この話はエロ・グロ・神姫破壊が含まれた打ちっ放し短編です。それでもいいよとおっしゃられる方はどうぞ。 連続神姫ラジオ 浸食機械 ~ファタモルガナ~ 1:末路 「そーれ」 少女の軽快なかけ声と共に空を切る音が響く。続いてグチュっと言う音と 「ひぎゃぁう」 奇妙な叫び声があがった。 「大命中、やっぱり私はすごいね、マスター」 先ほどかけ声をあげた少女が振り返り僕に語りかける。少女と言っても彼女はニンゲンでは無かった。全長16センチの機械仕掛け、武装神姫と呼ばれるロボットである。彼女はカブトムシをモチーフにしたランサメント型と呼ばれるタイプだ。しかし彼女は製品版とはカラーリングが異なっている。武装はシルクのような光沢のある白に塗られている。素体も白をを基調として所々に黒や金が使われていた。腰まであろうかという髪は青みがかった黒で、リボンでポニーテールにまとめられていた。 「ねえねえ、次はどれをいってみようか?やっぱり派手にどばーって出る方がいいかな」 彼女の足下には彼女ほどのサイズのナイフや釘が乱雑に散らばっていた。彼女は今までこれを「的」に投げて刺す遊びをしていたのだ。ちなみに勝率はなかなかのものである。 「マヤ、しばらく待ってくれ。彼女と話がしたいから」 マヤと呼ばれた神姫は少し不満げに頬をふくらませたが、分かったと答えて手に持っていた千枚通しを床に置いた。僕はそれを見届けると机の上の瓶を手に「的」に近づいていった。 「気分はどう?お友達のことが心配でここに来たみたいだけど技量は考えた方がいいよ」 「的」は、壁に手足を埋め込まれ、服を破かれ半裸になった少女はこちらにおびえた様な目を向けるばかりで答える様子はない。白い張りのある肌に何カ所もナイフや釘が突き刺さりだいぶ出血しているのだから答える気力も無いのかもしれない。もっとも、背中に生命維持のためのチューブを何本もつないでいるのだ。そこから送られる薬品のおかげで、まあ、とりあえずすぐ死ぬことはないだろう。 「まあ、どうでもいいけど。そうそう、ここに連れてこられたとき自分の神姫、確かヴィクターちゃんだっけ?のことすごく心配してたねよね、だから連れてきてあげたよ」 僕の差し出した瓶の中身を見て彼女は目を見開く。瓶の中には彼女の神姫であるオールベルンパール型のヴィクターが入れられていた。武装を外され、薔薇シフォンに身を包んだ彼女は四肢を金の鎖で絡め取られ、足を大きく広げた姿で瓶の中に閉じ込められていた。 「ヴィクター!」 痛いだろうに無理矢理身ををよじり少女は自分の神姫の名前を叫ぶ。しかしヴィクターは目を閉じたまま動かない。 「スリープモードのままだったね、ごめんごめん」 僕はヴィクターに送っていた彼女を眠らせる電波を止める。すぐに彼女は目を覚ました。そして目の前に広がる自分のマスターの惨状を見てその表情が怒りに染まる。振り向いて僕を見つけると飛びかかろうとでもしたのだろうか、身をよじるが鎖にからめとられて動くことができない。それでも構うことなく僕の方に向かってこようとする。鎖を切れない身をよじり、殺してやると叫びながら。 「殺すんなら一撃でやってくれなきゃお断りだよ。もっともその機会はないだろうけどね」 叫び続ける彼女の入った瓶を机の上に置くとマヤがその周囲にカメラを設置していく。 「い、一体何する気?ヴィクターにはひどいことしないで」 残念だけどそれは無理な話だ。負けがかさんだ友達を救いにやってきた彼女を美馬坂は許すなと言った。お友達はお友達でひどい目に遭っているが彼女もまたひどい目にあう、彼女の神姫と一緒というのがまあ、救いか。 僕はヴィクターの入った瓶にポケットから取り出したものを入れる。それは蛇だった。神姫サイズにミニチュア化されたアナコンダが三匹。もちろん本物ではないが面白い機能として体内のカプセルを対象に射出できると言う機能がある。そのカプセルの中にはこれまたミニチュアの蛇が何匹も入っている。つまりこれを使えば神姫の受胎、産卵ショーが楽しめるというわけである。 蛇に巻き付かれおぞましさに顔をゆがめるヴィクター、それを見て必死に彼女の名を叫ぶ少女だがその声は突然の殴打により止んだ。部屋に男達が入ってきた、仮面をつけ、手には様々な器具を持っている。彼女を殴ったのはその男達の一人だ。恐怖におびえ、声も出せない彼女を男達が取り囲んだ・・・ 蛇に身をまさぐられるおぞましさを感じるヴィクターだったが主のピンチと僕への怒りから気丈な表情を向けてくる。しかし蛇の一匹が彼女の秘所に潜り込もうとするとさすがに表情が変わった。肝心なところはスカートで隠れているが本能的に恐怖を感じるのだろう。膝をもぞもぞさせるが蛇を防ぐことなどできない。 「いや、やめて!」 そうヴィクターが叫んだとき、部屋の壁が明るく光る。壁にはモニターが埋め込まれており彼女の痴態が大画面に表示される。呆然としたヴィクターが嫌々と首を振り鎖につながれた手足を振り回すが無駄なあがきだった。存分に彼女の腹上を満喫した蛇はやがてカプセルの射出を始める。ドレスの腹の部分がふくらみまるで妊婦のようになった。その頃になるとこちらの様子に気がついたのか男達の何名かがこちらにやってきて彼女の痴態を眺める。その股間は一様に怒張していた。 「良かったわね、あなたのこと見てみんな興奮してくれてるわよ。いっぱいかけてもらうといいわ」 マヤの言葉に美馬坂の根回しが効いているのか男達は彼女の痴態をおかずに自慰を始める。ヴィクターが自分の運命に気がつき妊娠しながらもそれはやめてくれと懇願するがそんな彼女の顔に早速白濁がぶちまけられる。射精は続き、ドレスはカウパーでべったりと肌に張り付き彼女の美しい胸や腹のラインを浮きだたせている。そんな彼女に興奮したのか注がれた精液は彼女の膝ほどになった。 うつむいて小声で殺してやるとつぶやく彼女にマヤが声をかけた。 「ねえ、さっき産み付けられた卵だけどさ、あれって温度が一定になったら孵化するのよね」 その声に瓶の口を向いた彼女の顔にこれ以上ないと言った絶望的な表情が浮かぶ。 「元気な赤ちゃん、産んでね」 「いやぁぁぁぁ!蛇のママになんかなりたくない、マスター、ねぇ助けて、マスターぁ!」 ついに弱音を吐き出した彼女だが無情にもその腹がもぞもぞと動き始めた。産まれるのだ。 「お願いやめて出てこないで、助けてマスター、助けてよ、うぁぁぁああああん」 泣きじゃくり、もがく彼女のスカートからゾルッという音と共に蛇が落ちてくる。ヴィクターが悲鳴を上げ、それを境にどぼどぼと蛇の子が生まれていく。その光景が引き金になったのかさらに男達がオーガズムに達し、滝のような精液が注がれていく。生まれた子蛇は母乳を求めてか早速彼女の胸に群がっていく。出産のショックで、精液の雨も小蛇たちの乳辱もほうけた顔で受け止めるヴィクター。そして腹があいたことを悟った二匹目の蛇が彼女の腹の中へと潜り込んでいった。 戻る
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第2部 「ミッドナイトブルー」 第7話 「night-7」 真っ暗な屋内スタジアムに逃げ込むかのように集まる神姫たち。 航空母艦型MMSのツラギが発光信号でチカチカと合図を送る、すると少し離れた所で重巡洋戦艦型のマキシマとヴィクトリアが発光信号を返答する。 ツラギの艦橋ブロックに将校型のナターリャが寄りかかる。 ナターリャ「発光信号は送ったか?」 ツラギ「送りましたよ、しかしあんな所に配置してどーするつもりですか?こんなに散開してちゃ・・・」 ナターリャ「かまわんさ、それよりも甲板にいるあのバカ共に対空警戒を厳にするようにいっとけ」 ツラギ「アイアイサー・・・」 ツラギが甲板に目をやると、大砲を抱えた悪魔型と砲台型がびくびくと怯えている。 ニパラ「ああーーもうだめだ!みんなあの夜帝にぶっ殺されるんだ」 ルーシ「さっき、巡洋戦艦型のノザッパが巡航ミサイル喰らって一撃で轟沈したぞ!あの巡航ミサイルが空母に命中したら、弾薬や燃料に引火して大爆発を起こして爆沈するな」 ニパラ「縁起でもない!」 ルーシ「どーすんだよ」 ツラギの上空では生き残った艦載機の神姫たちがぐるぐると周回する。 アオイ「スタジアムに着いたぞ」 ツクヨミ「ここからどうするんだ?奴は袋のネズミの俺たちをいつでも好きなように料理できるぞ」 フェリア「奴のレーダー、センサーは優秀だ。共に暗闇の中でも俺たちをはっきりと捕捉できるだろうな・・・さっきの戦いでも戦艦型神姫の砲撃を軽く回避しやがった。フクロウのように目と耳がいい」 戦闘爆撃機型のマレズもうなずく。 マレズ「おまけにあいつはステルス性能も持ってる、この暗闇じゃ奴を捕らえられないし、レーダーやセンサーにも映らねえ・・・どーやって戦うんだよ」 ステルス戦闘機型のアネットが口を開く。 アネット「俺も一応はステルス能力を持ってる神姫だから・・・なんとなく奴の弱点というか欠点はわかるんだけどなあ・・・」 アオイ「なんだよ、教えろよ」 アネット「まあ、奴は夜間戦闘を専門にしている重戦闘機型だ・・・明るいところに引き摺りだせば、怖くねえ」 ツクヨミが呆れた顔で言う。 ツクヨミ「バカ、それが出来れば苦労しねえぜ、今何時だと思ってるんだ?世の中の12時だぜ?夜明けまで戦えって言うのかよ」 アオイ「それまでに全員ぶっ殺されるのがオチだな」 フェリア「・・・・」 バトルロンドの筐体の前にいるオーナーたちはナターリャの行動に疑問を持っていた。 わざわざ、逃げ場のないだだっぴろいスタジアムに逃げ込み、確たる対処方法もない。今現状の情勢を見る限りでは勝機がないことは誰の目にも明らかだ。 野木はたまらずナターリャに問いかける。 野木「おい!!!ナターリャ!ここからどうするつもりだ!!このままでは奴が来て全員嬲り殺されるぞ!」 ナターリャ「そうだな、全員、奴に撃沈されるだろうな・・・このままではな・・」 チカチカと暗闇で青白い光が瞬く。 キュイン!!! シュヴァルはリアパーツの素粒子砲を2連射する。 オタリア「ぐわぎゃあ!」 ドゴオオオン!!! ツラギの前方に護衛としてついていた戦乙女型のオタリアがバラバラに爆散して砕け散る。 □ 戦乙女型MMS「オタリア」Sランク 撃破 爆発したオタリアの爆炎でスタジアムに逃げ込んだ神姫たちを一瞬照らす。 アオイ「き、きたァ!!!」 ツクヨミ「ひいい!」 スタジアムの正面入り口から真っ黒な禍々しいフォルムをした武装神姫が飛び出す。 シュヴァル「敵機動部隊を捕捉しました」 夜神がふっと口元を歪ませ叫ぶ。 夜神「勝ったな!!!この暗闇の中で俺のシュヴァルに勝つことは不可能だ!!!!俺のシュヴァルが夜間戦闘では一番最強だァ!!!!!!!」 ナターリャ「暗闇の中ではな・・・」 ナターリャはパチンと指を鳴らす。 ガコン! スタジアムの巨大な照明がすべて一斉に照らされる。 屋内スタジアムの中はまるで昼間のように明るく照らし出される。 パッといきなり照明がつき明るくなりシュヴァルの暗視センサーは機能を失い、またその真っ黒な機体はくっきりとシルエットを照らし出していた。 シュヴァル「ぎゃああああああああああ!!!」 夜間戦闘を専門に行うシュヴァルのセンサーは優秀だった。精度を極限まで高めていたために急激な光源の変化に耐え切れなかった。シュヴァルはまるで化け物のような声で悲鳴を上げる。 夜神はぽかんと口を開けている。 夜神「なあァ?な、なんで照明が」 砲台型のルーシが思い出す。 ルーシ「あああーーもしかしてさっきノートパソコンでメール送ったのって・・・」 ナターリャ「なあに・・・ちょっと暗かったんで照明をつけただけさ」 ナターリャはくいっとスイッチをつけるマネをする。 ルーシ「す、スタジアムの照明システムにハッキングしましたね!ナターリャさん!」 ナターリャは肩をすくめる。 ナターリャ「さあ?なんのことかなーたまたま照明がついたようだな」 野木「しめた!奴の動きが鈍った!おまけに奴は今、はっきりと目視で捕捉できるぞ!!」 ナターリャはツラギの無線を奪い取って叫んだ。 ナターリャ「重巡洋戦艦型MMSのマキシマ!!!ヴィクトリア、待たせたなヘヴィー級のパンチを喰らわせてやれ!全神姫!一斉攻撃!!!!」 スタジアムの両脇に配置されていたマキシマとヴィクトリアがエンジン音を鳴らして砲口をヨタヨタと飛ぶシュヴァルに照準をつける。 マキシマ「このヴェンパイア野郎めッ!!!!ノザッパや他の連中の仇だ!!ブチ落としてやる!」 ヴィクトリア「主砲一斉発射、ミサイル1番から10番まで発射、ファイヤ」 戦艦型神姫の2人は強力な艦砲射撃をヨタヨタと飛ぶシュヴァル目掛けて行う。 3連ヘヴィ・ターボレーザー砲 4基 2連装ターボレーザー・キャノン 3基 艦首ミサイル発射管 4門 対空ミサイル砲 8門 三連装小型ミサイル発射筒 4基 後部ミサイル発射管 8門 通常の神姫とは比べ物にならない強力な武装による一斉砲撃が行われる。 ビリビリとスタジアムの空気が震えあがり、大気を焦がすレーザーの匂い、ミサイル発射缶が吹き上げる硝煙が充満する。 ズンズン・・・ズズウウズン!!ビシュウーーーーンビッシュウエエーーン!! シュヴァル「う、うああああああ!!!」 To be continued・・・・・・・・ 次に進む>第8話 「night-8」 前に戻る>第6話 「night-6」 トップページに戻る
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● 三毛猫観察日記 ● ◆ 第二話 「激闘!あおぞら商店街!」 ◆ 「ドキドキします…お二人の足手まといにならなければいいんですが」 「なに言ってるのよ小春ちゃん、今日は小春ちゃんが主役なんだからね!」 「そうですよ小春さん、大いに期待してますからね!」 どうも小春ちゃんって自信無さげなのよねぇ、あんなに強いのに。 「それでは今日の作戦を最終確認しましょう」お姉さん格のサンタ子ちゃんが言った。 7月22日、とうとう大会の当日です。アタシと小春ちゃんのデビュー戦だけど、一緒に トレーニングしてきた感じ、なかなかいいチームになったと思うの。 索敵・司令塔のサンタ子ちゃん。(ランカーなので自主的にハンデのウエイト装備) へヴィアタッカーの小春ちゃん。 そして小春ちゃんの盾/遊撃兵のアタシ。 このメンバーとコタローの特製装備なら、セカンドクラスでもいけると思うわ! 「・今日は6チーム総当りの5回戦で『市街戦』での模擬戦・リアルバトルです。 ・私が空から指示を出します。私が見ている映像は二人のバイザーに転送しますので、 敵との相対位置を測るのに役立ててください。 ・私に何かあったら指示はミアさんが出して下さい。どうやらミアさんの分析能力は 私達の中で…いえ、一般的に見てもトップレベルだと思うので、戦闘に慣れてきたら 司令塔を変ってもらうかもしれません。 ・作戦の基本は『小春さんを守る』です。状況によってはミアさんの遊撃もアリですが、 敵が二人以上残っている場合は、なるべく小春さんから離れないでください。 「ペイント弾でも気を抜くと怪我をしますから注意を。何か質問はありますか?」 「ありませ~ん!小春ちゃんはミアちゃんが絶対守るからね!」 「あ、あの…よろしくお願いします(モジモジ…はあと♪)」 一戦目、敵は悪魔型×2、天使型1。 一人で飛び出してきた天使型をサンタ子・小春の連携で瞬殺。その後サンタ子ちゃんが 残ったうちの一人を足止めして、もう一人をミア・小春の連携で瞬殺。で敵がギブアップ。 二戦目はもっと簡単。三人の騎士型を小春ちゃんが順番に撃破。アタシもサンタ子ちゃんも 傍で見ているだけでした。 三戦目は少し苦戦。編成がコッチと似ていたの。(天使型・騎士型・砲撃装備の悪魔型) でもそれはサスガにサンタ子ちゃん、サンタ子:騎士、小春:天使、アタシ:悪魔って 1対1同士に持ち込んで、被害無しで勝利。(あのままだと一人ぐらい被弾してたわね… やっぱり司令塔はサンタ子ちゃんでなくっちゃ!) 四戦目は不戦勝。対戦相手がケガをしちゃったみたい。アタシ達も気を付けないと… 休憩室のテーブルで一休みです。 「やったな小春、大活躍じゃないか!」 「あ、ありがとうございます♪」小暮ちゃんに誉められて、小春ちゃん嬉しそうね! 「よし、このまま無傷で優勝しちゃえ~!」 「はい、頑張ります♪」「そうですね!」「しちゃえ~!」 「こんにちは徳田さん。お元気そうですね」 突然、肩に天使型の神姫を乗せたスーツ姿の男が声を掛けてきたの。 「やぁ、久しぶり!…えーとゴメン、誰だったかな…」 「次の対戦相手の影田です。あぁ私自身は初対面ですよ。でも貴方の事は良く知ってます」 アキオちゃん、困った顔をしてます。本当に心当たりが無いみたいね… 「まだ解りませんか?あれ、今日は侍型の神姫は連れていないんですね。あぁそうか、 私達が破壊しちゃったんでしたっけねぇ」 突然アキオちゃんが、ものすごい形相でソイツに殴りかかった。 「キサマ『エスト』のメンバーかぁぁぁぁっ!!!」 「止せアキオ!!!」コタローがアキオちゃんを羽交い絞めして止めた。 ソイツ・影田は、ヤレヤレと呆れた仕草をした。 「あなた達のおかげで『エスト』は解散しました。しかし、まさかこんな所で報復の チャンスが来るとは思いませんでしたよ。 大会の運営部にはラストバトルだから実弾で盛り上げたいと話してあります。勿論、 挑戦を受けてくれますよね?」肩の天使型が、いやらしい笑いをした。 影田はどっかに行っちゃいました。 「な、何なんですかアイツは!?それに『エスト』って…訳が解りませんよ!」 小暮ちゃんと同じ、アタシもワケ解んない。 「…『エスト』と言うのはな、小暮君」とコタロー。 「『エスト』と言うのは、神姫を従えた20人ぐらいの不良チームだったんだ。 メンバーの中には強盗傷害裏バトルと、違法行為を行っていたヤツもいた。 そんな連中にアキオの昔の相棒、侍型「桜花」は破壊されたんだ」 「な…神姫を…先輩の神姫を破壊ですって!!??」 小暮ちゃんが、抱えていた小春ちゃんを思わず抱きしめた。 「…その敵討ちに、俺とアキオで主要メンバーを警察へ突き出したんだんだが… 今頃下っ端が出てくるとは…」 「…………サンタ子、準備はいいか?」 長い沈黙の後、アキオちゃんが口を開きました。 「待てよ、今更あんなヤツと実弾バトルなんて、何の意味があるんだ!」 「止めないで下さい、虎太郎さん」サンタ子ちゃんが割って入る。 「あの人達だけは許せないんです、何と言われようと。私一人だろうと戦いますよ!!」 「なに言ってるのサンタ子ちゃん、ミアちゃんもモチロン戦うよ!」 「私も戦います…あんな人、許せないです…!」 コタローが、みんなの顔を一人ずつ見つめてから言った。 「…………解った。ミア、みんなを守ってやるんだぞ…」 「アイアイサー!ミアちゃん頑張るよ!!」 商店街の中央に作られた試合会場は、いままでのどの試合の時よりも騒然としてる。 これが最後の試合だし、急遽実弾バトルになった事も影響してるのね。 サンタ子ちゃんはウエイトを外し、代わりに愛用の野太刀「花鳥風月」を装備してる。 空中高速接近戦が本来の戦闘スタイルなのです。 小春ちゃんはペイント弾を実弾にして、アタシはウレタン製の猫武器を本来のに戻す。 対して影田チーム。マスターは影田一人、天使型+砲台型×2のチーム。 砲台型は普通の装備に見えるけど…天使型の持ってるレーザーライフルがちょっと変。 ジョイント用の穴だらけだし、なんか大きくない? 「大変お待たせいたしました。それでは『あおぞら商店街杯・武装神姫チームバトル大会』 のファイナルバトルを開始します!レディ~~~ゴー!!」 「作戦は今まで通り、まず私が斥候に出ます」サンタ子ちゃんが飛び出した。 アタシと小春ちゃんは、サンタ子ちゃんから送られてくる映像をたよりに前進する。 「敵は動いていません、三人固まって広場の奥に引っ込んでるわ。敵の戦力を考えると 今回は小春さんに弾幕を張ってもらって、私とミアさんで順番に一撃離脱がいいかも しれません」 パーフェクトな作戦だと思うけど、何か、何かイヤな予感がするのよね… アタシと小春ちゃんは射程距離ギリギリのところまで移動してきた。これ以上近づくと 敵の射程距離にも入っちゃう。 ここからなら肉眼でも敵の三人を確認できる。ホントに動いてないわねぇ。まるで三人が 一つの砲台みたいに見える。 ハッ!!!! 「小春ちゃんサンタ子ちゃん、スグに離脱して!!!!!!!!」 私達が撤退を始めた直後、大砲が発射された。 それは、LC3レーザーライフルの射線じゃなかった。二人の砲台型から取り外した パーツを取り付け、残った裸の素体をパワーパックとして接続したソレは、レーザー バズーカと言った方がシックリくる。 直撃を予想したアタシは小春ちゃんを蹴り飛ばし(「小春ちゃんゴメン!」)その反動で 自分も回避行動をとる。 「小春ちゃん!!!」 「大丈夫、手をかすっただけです。ミアちゃんが助けてくれなかったら、私、多分 破壊されてました…」 小春ちゃんの左手が鈍く変色している。強がっているけど、かなり辛いはずだわ。 「二人とも大丈夫ですか!!?」サンタ子ちゃんが空から降りてきた。 「とりあえず命は無事だよ。でも、あの武器が…」 こちらより射線が長く、強力な武器。それは攻略しようとするだけで、多大な犠牲を 覚悟しなくちゃいけないってこと。 「…ミア、それからみんな、ギブアップするぞ」コタローから通信が入った。 「アレが動き出したら、それこそ最後だ。ミア、お前なら予想できるだろう?」 「そんな、虎太郎さん。まだやれます!私が囮になって」 「サンタ子、バカを言うな!確かにヤツは許せないが、お前達が犠牲になる必要は無い! それでいいな?アキオ、小暮」「……………あぁ…」「はい…」 「でも、小春さんだってこんな怪我を…桜花さん……うっううっっ」 フィールドの向こうでは、影田がニヤニヤしている。 沈黙。みんな気持ちは同じだけど、悔しいけど、どうする事も出来ない… アタシ以外は。 「コタロー、1分だけ時間をちょうだい。ミアがあのバズーカを破壊する!」 「え?あ、ミア!?何を…無茶だ、いくらお前でもあの距離、狙い撃ちされるぞ!」 「コタローお願い…ミアを信じて!」 「だが……」 『信じて!』 「…………………解った。だが、無理はするなよ…」 「ありがとう、コタロー」 ネットにダイブしてる時に、武装神姫と似た設定のマンガを見つけたの。その中で、 自分にダメージを与えることによって緊急回路を発動させ、ハイパー化するというのが あった。神姫でも同じ事が出来ないかな…というのが発端。 出来るのよ。危険だしコントロールが難しいけど。こっそり訓練だってしたし。 体の各動力部を慎重に臨界まで上げていき、擬似ダメージを蓄積させる。制御を失敗して しまえば、本当に爆発しちゃうかもしれない。 バズーカが動き出した。速度は早足程度だけど、確実にこちらに近づいてくる。 「二人とも、アレの後ろに周りこんでちょうだい!」「了解です」「え、あ、はい!」 この移動速度ならギリギリ射程距離に入った直後に発動できる。 案の定、発動準備が整った瞬間にバズーカの発射準備を始めた。もう遅いわよ! 「―――――――――バーストモード、いっくよぉ~!」 次の瞬間、アタシの体を真紅の光が包み込む。この警報シグナルが点いてる1分間が勝負。 突然のアタシの変化に驚いたのか、敵はあわててバズーカを発射する。 狙いが甘い!一旦左によけて、そのままバズーカ目指してダッシュする。 二撃目は見当違いな所へ発射。スピードアップしたアタシに全然対応できていない。 天使型の表情が見えた。なにか化物でも見るような顔をしている。ある意味化物かも しれないわね。今のアタシなら熊だって倒せるハズ。 三、四撃目を楽々かわし、天使型の目と鼻の先に到達。 2体の裸の素体はバズーカにケーブルで連結されて、無表情に立っている。ホントに パワー供給装置として使われているみたい。 天使型は…大きく目を見開いて、恐怖のあまり顔が引きつってる。 「後悔したって、もう遅いんだからね!!」 頭の中でEXゲージがピカピカ点滅してる感じ。時間が無いし、決めるわよ! 「超必殺……… 猫 ・ 乱 ・ 踊 !!! 」 アッパーフックアッパー手刀フックストレートフック肘肘アッパー裏拳フックアッパー 掌打フックアッパービンタビンタ肘肘肘アッパーフック膝膝膝膝フックアッパー 前蹴り回し蹴り回し蹴り踵落としトドメのサマーソルト!!! 一瞬でボロ雑巾のようになってしまった天使型は、最後のサマーソルトの勢いですっ飛んで いった。少しやり過ぎたちゃったかな? サンタ子ちゃんが来た。この急な展開にもちゃんと対応してる。流石です。 小春ちゃんは遠くで武器を構えてるけど、ビックリして固まっちゃってます。 「ミアさん、大丈夫ですか!?」 「サンタ子ちゃん…後はまかせちゃうね…」 警報シグナルの光が消えて、同時にアタシの意識も消えていきました。 その日の夜、やっとアタシは目を覚ましました。 結局大会はそのまま終了しちゃったそうです。残った2体の素体は天使型が倒された瞬間に 起動停止したそうで…ホントにパワーユニットとしてのみ使われてたのね。 影田は試合終了直後に姿を消しちゃったそうです。 それから。 バーストモードのせいでアタシのボディはボロボロになってたの。特に関節系の部品の 磨耗が激しく、修理には相当の手間がかかるんだって。 (虎太郎「手間なんていいんだ。それより俺は無理するなって言ったハズだぞ?」) 簡易素体に入れられたアタシは、もう1時間以上コタローからお説教されてます。 まぁコタローに心配掛けるのも何だし、当分の間は大人しくしてよっと。 当分の間は、ね! 第三話 意思を継ぐ者 へ進む 第一話 猫、飼いました へ戻る 三毛猫観察日記 トップページへ戻る
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デザイナー 声優 神姫解説 性格セリフ一覧 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 覚えるパッシブスキル一覧 神姫固有武器補正 神姫考察攻撃力 防御力 機動力 運用・総評 神姫攻略法 お迎え方 アップデート履歴 コメント デザイナー 島田フミカネ(ストライクウィッチーズ、メカ娘等) 声優 阿澄佳奈(ひだまりスケッチ:ゆの、WORKING!:種島ぽぷら、這いよれ!ニャル子さん:ニャル子、ささみさん@がんばらない:月読鎖々美、他) 神姫解説 アーンヴァルを3rd規格の素体ベースで新造し、武装も新たにリニューアルした最新モデル。前モデルよりクロスレンジ戦闘能力が強化され幅広い戦術が可能となっている。AI設定は素直なものとなっており、初心者オーナーでも扱いやすい神姫と言える。 名称:天使型アーンヴァルMk.2(てんしがたあーんゔぁるまーくつー) メーカー 素体:FRONT LINE 武装:FRONT LINE 型番:FL016 (FLO16とする記述もある) フィギュア発売:2010年7月15日(バトルマスターズ同梱)/2011年9月22日(フルアームズパッケージ)(バトルマスターズMk.2同梱) 主な武装:M8ライトセイバー(未使用時は両肩に装着。バトコンでは双斬撃武器) M8ダブルライトセイバー(二つのM8ライトセイバーを合体させた状態。バトコンでは双頭刃斬撃武器) GEモデルLS7レーザーソード(腕に固定する大型ソードだが、大型過ぎて取り回しに難あり。バトコンでは防具用武器) GEモデルLS9レーザーソード(上記ソードの欠点を解消した、手持ち式の大型ソード。バトコンでは両手斬撃武器) リリアーヌ(ビット。こちらは攻撃対象に直接斬撃攻撃をする。バトコンでは未実装) ココレット(ビット。こちらは攻撃対象に射撃攻撃をする。バトコンでは未実装) アルヴォPDW11(ハンドガン。バトコンでは片手ライトガン) アルヴォPDW11エクステンド(アルヴォPDW11に銃剣アタッチメントを装着した状態。バトコンでは未実装) GEモデルLC5レーザーライフル(一部パーツを変えてGEモデルLC7レーザーキャノンにできる。バトコンでは未実装) GEモデルLC7レーザーキャノン(一部パーツを変えてGEモデルLC5レーザーライフルにできる。バトコンでは防具用武器) ラファール(パーツの組み替えで生成する支援機。名前はフランス語で「疾風」を意味しており、同名のフランスの戦闘機も存在している。バトコンではアクティブスキル使用時に拝見できる) ※なお、彼女の武装アルヴォPDW11(ハンドガン)は同じフロントライン製神姫、天使コマンド型ウェルクストラの所持武装とまったく同名である。バトマスではDLC武器「アルヴォPDW11+アルヴォGB1ガンマウントブレイド」として収録されている。バトルロンドでもそうだったのでこの一致はミスなのか意図的かは不明。 通称「白子」「白子Mk.2」「しろにー」「あんばる(初代機と同じだが、偶に使われる事がある)」。 FRONT LINE社のベストセラー機種アーンヴァル系列の最新モデル。 初期モデルのアーンヴァルは、改修、追加パーツによるアップデートが限界を迎えていたため、素体を3rd規格で新造し、武装の機能を統合パッケージ化したもの。 初期モデルが戦闘スタイルによって選択していた単能武装を、個々のパーツに複数の機能を持たせることにより、一体の神姫が無理なく使えるサイズにまで小型化している。 スペック的には、これまで苦手としていたクロスレンジ戦闘能力が特に強化されマルチロール化した反面、単純な直線加速力、最高速度などは初期モデルに劣る。 また、アーマーパーツは組み合わせて支援機「ラファール」として運用可能であり、幅広い戦術を選択することが可能となっている。 本モデルはリリース後も随時仕様のアップデートを行っており、2041年時点においてはロールアウト時と比較して多彩な武装が可能となっている。 新たな追加装備としてバリエーション機であるテンペスタ(FL016/T)で試験的に採用された大型ウイング、脚部バランサーなどのパーツを同機の実績により正式導入。更に既存火器の機関部を流用した大型ソード・GEモデルLS9レーザーソード、長距離用ランチャー・GEモデルLC7レーザーキャノンを採用し、クロスレンジからロングレンジまで広い範囲において攻撃力が上昇している。 基本AI設定は初期モデルを踏襲した素直なものとなっており、初心者オーナーでも扱いやすい神姫と言える。 上の解説にあるとおり、武装神姫第1弾として発売された天使型アーンヴァルの正統後継機なのだが、フィギュアは(ストラーフMk.2と共に)ノーマル版(上記のロールアウト時)はバトマス特別版、フルアームズパッケージ版(上記の2041年時点)はバトマスMk.2特別版のおまけ(というか、大きさからしてゲームの方がおまけ)という特殊な流通形態(どちらの特別版も、コナミスタイル限定販売)を取ったため、入手手段が限られてしまったという経緯を持つ。 (リペイント版であるテンペスタが一般流通するという、これまでの「ノーマル=一般流通 リペイント=限定流通」とは逆のパターンとなったのはこのためでもある) 2012年以降、正規ルートでは新品のアーンヴァルMk.2の入手は不可能と言っても良い(棚卸し等のイベントで一瞬、限定版が復活することはあるが、大体が訓練された武装紳士達に一瞬で瞬殺されるため、神姫初心者が入手できる可能性は限りなく低いと言わざるを得ない)。 なお、3rd素体で一新した素体、さらにおそらくは武装神姫史上最多数の武装パーツにより、プレイバリューは歴代神姫の中でも屈指であると言え「さすがはフロントライン社のフラッグシップモデル」と呼べる出来になっている。 それだけに重ね々々、限定流通なのが悔やまれるところである。 余談になるが、このフルアームズ版のテンペスタが、コナミ内製のフィギュアが一般販売された武装神姫の掉尾を飾っている(2012年3月15日)が、新作ではなくリデコリカラー品であるため、その一ヶ月前(同年2月23日)に発売されたフブキ/ミズキ弐型を「最後の武装神姫」として挙げる声もある。 ただし、武装なしの素体だけであれば、2016年にアニメ版Blu-ray BOXの購入者特典として復刻生産されたもの(アン名義)が少数存在するが、細部が当時品と若干異なっており、これはこれで物議を醸した。 ちなみに、テンペスタ(フルアームズパッケージ)カラーのM8ダブルライトセイバー[R]がレイドボスバトルのロケテ報酬として、GEモデルLS9レーザーソードがレイドボスバトル(第二回)の闇神姫打倒の報酬となっている。 メインビジュアルにいるだけあって、公式媒体に於いても各ゲーム版で皆勤賞。発売時期の問題でコミック媒体各作品には登場しない(初代アーンヴァルは登場)ものの、アニメでは主役級レギュラー「アン」としてお馴染みの神姫である。 そして、当然のように2024年のパチスロ版にもメインビジュアルから登板。あちらでは通常の姿と「リミッター解除」としてテンペスタの姿とを使い分ける。 似たような能力を持つ神姫としてはバトマスのDLCに収録されたアニメ「Moon Angel」に登場する本機、個体名「かぐや」が存在。ただし、あちらはあくまでも神姫に身をやつした別の存在で、変化後の姿も「アーンヴァルMk.2黒」という、テンペスタとは別のオリジナル神姫扱いである。 看板神姫 パーツを組み替えることで別形態になる、という仕様上今作では一番のパーツ量を誇る。 ……が、テンペスタ実装後は先にFAP装備をあちらへと実装される等、ちょっと不遇気味。 ここは、オリジナル機としての挽回(!?)に期待したいところ。 全パーツ全レアリティ揃えれば、初心者卒業だ! 性格 真面目な優等生といった感じの性格。 誰にでも丁寧に接するため人当たりは良く、そこらの人間よりもずっとコミュ力が高い。オーナーに献身的な姿勢もあって人気も高い。 ただ冗談が通じなかったり洞察力がなかったり本音が直ぐ出たりと所々オーナーのカバーが必要なのは覚えておこう。 セリフ一覧 + おはようございます!マスター♪ ログイン時 通常(朝) おはようございます。来てくれたんですね!嬉しいです! おはようございます。今日も頑張りましょう! 通常(昼) こんにちは!今日の調子はいかがですか? こんにちは。ランチは終わりましたか?お昼抜きだと力が出ませんからね。 通常(夕) こんにちは。おやつはいかがですか?では、頑張りましょう! おかえりなさい!バトルの準備をしましょう! 通常(夜) おかえりなさい!今日はどんな感じで行きましょうか! こんばんは。夜遅くまでお付き合いいただき、ありがとうございます。 通常(深夜) こんばんは!夜のバトルも一興ですね。楽しみましょう! こんな時間でも頑張るなんて流石です! 年始 あけましておめでとうございます!本年も頑張りますので、どうぞよろしくお願いしますね! バレンタイン 思いを伝えるために、チョコを用意しました。足りなければまだまだあるので、遠慮なく言ってくださいね♪ ホワイトデー えっ?これを私に…?嬉しいです!あっ、バレンタインのお返しなんですね!じゃあ来年もさらにお返ししますね! エイプリルフール ゴールデンウィーク 夏季 暑くなってきましたね。体調を崩さないよう体調管理はしっかりしましょう! 七夕 星がきれいですね。今日は愛し合う二人が出会えるロマンチックな日です! 水着 ただ今期間限定イベント開催中です。特別に水着を着ちゃうそうですよ?期待してくださいね♪ ハロウィン トリックオアトリート!あ、お菓子ないんですか。じゃあ、どんなイタズラがお好みですか? 冬季 寒くなってきましたね。メンテナンスされてますか?規則正しい生活が、健康の第一歩ですよ! クリスマス メリークリスマスです!この特別な日、もし良かったら、今日はずっと一緒にいたいです! 神姫の発売日 え?これを私にですか?ありがとうございます、マスター!私の誕生日覚えていてくれたんですね!とっても嬉しいです♪ オーナーの誕生日 誕生日おめでとうございます!一緒にお祝いできて私も幸せです♪ 神姫ハウス 命名時 呼び方変更 (呼び方)、どうでしょうか?この際、呼び方を変えてより適切な関係性を築くというのは? (→決定後) (呼び方)ですね。わかりました! LvUP後 MVP獲得 3連勝後 やりましたよ、(呼び方)!3連勝です!このまま勝ち続けられるように頑張りますね! 3連敗後 専用スキル解放時 親密度Lv5後 (呼び方)!今日もバトルお疲れ様でした!え、これから用事があるんですか?いってらっしゃーい! 親密度Lv10後 そういえば(呼び方)とお出かけってまだしたことないような…。今度、(プレイヤー名)を誘ってみようかな? 親密度Lv20後 (呼び方)!もしよければ今度私とお出かけしませんか?いいですか?やったー!ありがとうございます! 親密度Lv30後 (呼び方)とお出かけできるなんてうれしいな♪じゃあどこに行きましょう?行きたいところとかありますか? 親密度Lv40後 私が選んでいいんですか?じゃあ…。ゲームセンター?ショッピング…?映画…?どこがいいかな…? 親密度Lv50後 よし!決めました!(呼び方)!私、お洋服が見たいのでショッピングに行きましょう! 親密度Lv60後 せっかくのお出かけだから何を着ていこうかな?(呼び方)!この服はどうですか?かわいいですか? 親密度Lv70後 よし!この服に決めました!私に似合ってますか?褒めてもらえるとうれしいですね、えへへ。 親密度Lv80後 わー!(呼び方)もおしゃれしてとってもかっこいいです!じゃあ早速出かけましょう! 親密度Lv90後 どうですか、この服!とってもかわいいと思いませんか?え、プレゼントしてくれるんですか? ありがとうございますうれしいです! 親密度Lv100後 (呼び方)!この間のお出かけあれってデートですよね…?大好きな人とのデートとっても楽しかったな。また一緒にお出かけしましょうね♪ 親愛度Lv1~19限定 親愛度Lv20~39限定 親愛度Lv40~59限定 親愛度Lv60~79限定 親愛度Lv80以上 頭タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 胸タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 尻タッチ(親密度1~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 通常会話 私の好きなことですか?そうですね…。私は(呼び方)と一緒にバトルをしてる瞬間が一番大好きです! (呼び方)のメンテナンスのおかげか、ここのところすごく調子がいいんです。 クリスマス限定 メリークリスマスですね(呼び方)!パーティーの準備をしてますから今日は一緒にお祝いしましょうね♪ 年始限定 旧年中はお世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いします。どうですか?年末にこっそり挨拶の練習をしてたんです♪ 武装カスタム 戦闘力Up時 戦闘力Down時 武器LvUP時 素体カスタム 親密度LvUp時 限界突破時 わあ…まだまだ強くなれますね! 出撃時 入れ替え バトル開始時 がんばりますので、見ていてくださいね! 自分の力を出し切ってがんばります! → 楽しいバトルにしましょうね! バトル中 撃破時 コンテナ入手時 被弾時 オーバーヒート時 スキル発動時 これでパワーアップです! (HP回復系) ○○してあげます! これが天翔る天使の騎馬!グランニューレ! チャーミークリアボイス いきますよ!正々 堂々 楽しいバトルにしましょうね♪ 被撃破時 次出撃時 サイドモニター 応援時 交代時 被撃破時 バトル終了時 1位 やったぁ~!勝ちましたぁ!こんなに鮮やかに勝てるなんて、自分でもびっくりです! やりましたよぉ私!見ててくれましたよね! → ご褒美に頭撫でてください! 2位 2位でした。すっきりしない結果ですみません。 → 諦めませんよ!必ず成果を挙げてみせます! 3位 えっ、と…すみません、3位だなんて…次は、きっと… → この敗北の反省を活かして、必ず勝ってみせます! 4位 → コンテナ獲得後1位 そしてコンテナもゲットです! コンテナ獲得後2位以下 でも、コンテナは持って来ましたよ。プレゼントです! 親密度LvUP時 前よりもちょっとだけ、お力になれると思います! マスターレベルUP時 レイド成功時 レイド失敗時 カラフルコンダクト いつまでもあなたのそばにいます (2021/09/07~) 何なりと私に言ってくださいね 全力で勝ちます見てください いつまでもあなたのそばにいます(実装当初の歌詞と同じ) 神姫ショップお迎え時 はじめまして!お越しいただきありがとうございます! はじめまして!頑張りますので、よろしくお願いします! ゲームオーバー時 一緒に戦えて嬉しかったです!また来て下さいね! その他 + リセット開始 神姫の想い、大切に。 + 選択した神姫をリセットします。よろしいですか? リセット開始 え、リセットするって本気ですか? はい を押す 私、忘れたくないんです!もう一度チャンスを下さい! はい を押す(二回目) そう…ですか…本当は私…いえ、何でもありません、さようなら… リセット完了 はじめまして!お越しいただきありがとうございます! リセット取消 はあぁ、良かったぁ!もぉ!タチの悪い冗談はこれっきりにしてください! 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 マスター・お兄様・ご主人様 神姫ハウス内コミュニケーション LV60~LV69 頭 LP 胸 防御 ステータス情報 親密度Lv1 ATK DEF SPD LP BST N 30 40 110 300 100 R 35 45 120 350 120 SR 40 50 130 400 140 UR 45 55 140 450 160 親密度Lv100 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - マスクステータス 1/s ジェム回収展開速度 ブースト回復量 ダッシュ速度 ダッシュ時ブースト消費量 ジャンプ時ブースト消費量 対空時ブースト消費量 防御時ブースト消費量 N 1750 150 960 85 50 20 70 R 1050 105 70 40 90 SR 1140 125 90 60 110 UR 1230 145 110 80 130 覚えるパッシブスキル一覧 モード オブ エンゼルアーンヴァル専用パッシブ一定の確率で攻撃を無効化 防御力アップ[小]防御力を上げる 攻撃スピードアップ[小]攻撃時のスピードが上がる クリティカル発生アップ[小]クリティカルが出る確率が上がる ジェムの出す量軽減[小]敵に攻撃された際に出すジェムの出す量を少なくする 早熟型のパターンで覚えるスキル ホーミング性能アップ[小]射撃時の弾のホーミング性能が上がる 攻撃力アップ[小] *要限界突破(L110)攻撃力を上げる ブーストアップ[中] *要限界突破(L120)ブースト時の移動スピードアップ 通常型のパターンで覚えるスキル 射程増加[小]攻撃距離が伸びる ブースト最大値アップ[小] *要限界突破(L110)ブーストゲージの最大値を上げる 攻撃力アップ[中] *要限界突破(L120)攻撃力を上げる 晩成型のパターンで覚えるスキル 体力最大値アップ[小]体力の最大値を上げる スピードアップ[小] *要限界突破(L110)移動する際のスピードアップ 射程増加[中] *要限界突破(L120)攻撃距離が伸びる 神姫固有武器補正 ※レアリティが上がる毎に得意武器は-5%、苦手武器は+5%される。数字はレア度Nのもの。 得意武器 +30% 片手斬撃武器・両手斬撃武器・双斬撃武器・双頭刃斬撃武器・片手ライトガン・防具用武器・肩持ちヘビーガン 不得意武器 -30% 格闘打撃武器・両手打撃武器 神姫考察 攻撃力 神姫自体のATK値は低め。覚えるパッシブスキルも攻撃力に直接関わるのはクリティカル発生アップのみ。防具でカバーしないと火力負けは必須。 近接武器は頭一つ抜けた火力の双頭刃斬撃武器で火力の低さをカバーするか豊富なアクティブスキルを選べる両手斬撃武器のどちらかになる。 遠距離武器は片手ライトガン頼りになる。防具用武器でも戦えなくは無いが、射程は短いわ癖が強いわで試合に付いて行けない。 防御力 必ず覚える防御力アップに晩成型のみ覚える体力最大値アップ。神姫自体のDFE値や周りと比較すると物足りないか。 専用パッシブスキルは発動すれば強力なスキルだが低確立。 その専用パッシブスキルに防御面で大きく依存しているだけなので、総合的にな防御力は平均的よりやや高めといったところか。 専用パッシブスキルの発動率に自信があるならATK値重視のアセンも面白いかもしれない。 機動力 ごく平凡だが、全体の中では遅い分類に属する。 運用・総評 武装神姫というコンテンツの顔だけあって、なんでもできる幅広い対応力(得意武装の数が多い)のが売り。 特に数多い自身の武装がすべて得意武器に設定されているのが大きい。同一武装限定なんて縛りでも問題なく対応できるし、極論この神姫だけ育てても完結できる。 打撃系武器は一緒に開発されてないためか苦手武器扱いだが、どちらも扱いに癖があるので装備しなくても問題ないだろう。 専用スキルの発動率は約20%。攻撃自体無かったことにするのではなく、ダメージ表記のない0ダメージにする。0ダメージの攻撃を受けているので、ガード成功時にも発動し、その分ブーストも消費する。 発動してしまえばどんな攻撃も0ダメージにする強力なスキルだが、あくまで確立。発動すればラッキー程度の認識で。 同じ無効化のヴァッフェドルフィンとは得意武器がほぼ全て被ってないうえに発動条件はこちらのが緩い。自身の得意武器によってはあちらからの乗り換えを検討しよう。 機動面では優れた特徴が何もないので、近寄るのに苦労する。個体値ブースト単に機動力を上げるアクティブスキルか長射程でカバーしないと厳しい立ち回りを強いられる。 近接武器メインならGEモデルLS9レーザーソードG、遠距離武器メインならパウダースプレイヤーがオススメ。 防御力は最高峰なので、NRURのような最後のURで逃げ切る戦略にはうってつけ。 神姫攻略法 唯一の特徴である専用スキルも完全受け身のスキルのため、基本的に無視で良い。 ただ無視しすぎていつの間にか取り返しのつかない量のジェムを獲得していたなんて時は、専用スキルも合わさってかなり撃破に時間がかかってしまう。 相手もURで逃げ切る戦略が多いと思うので、基本の対策である早めにURを引きずり出すか完全放置でURを出させないか、随時様子を見て柔軟に立ち回ろう。 そうそうないとは思うが、渾身の単発超火力を無効化されたなんてこともなくはないので、できるなら手数の多い武器で挑みたい。 お迎え方 稼動開始(2020/12/24~)から神姫ショップに登場 アップデート履歴 日時:2021.5.26 内容:専用パッシブスキルの説明文変更 日時:2021.4.27 内容:得意武器に「双頭刃斬撃武器」の追加 苦手武器から「片手打撃武器」の削除 バトルメンバーにいる場合、バトル中のBGMが変更されるように。なお一番手に配列しないとBGMは変更されない。 日時:2023.8.7 内容:DEF、DEX、ジェム防御力、クリティカル、ダッシュスピード、ジャンプスピード、ブーストゲージ回復量を上方修正 ※実は7月のアップデート(どの日かは不明)で更新されていたのだが、発表はこの時となった。 コメント 作品の顔ともいえる神姫ではあるが昨今エーデルワイスに枠取られがち…性能の差というか異常な機動力の差なんだけど -- 名無しさん (2021-01-05 22 41 29) ヘッドセンサーユニコーン[A]全ステータスアップ [B][C]コンボの最終ダメージ増加 -- 名無しさん (2021-01-06 21 13 08) スキルが溜まりやすい? -- 名無しさん (2021-08-11 22 14 00) 晩成型で1防御力アップ2体力最大値アップ3攻撃スピードアップ4ジェムの出す量軽減5クリティカル発生アップ -- 名無しさん (2021-08-22 02 13 59) 名前 コメント
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「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」 冒頭からオッサンの悲鳴で申し訳ない… あの騒がしかった事件(?)から数日、とりあえず俺とアルティのわだかまりについてはひと段落着いた………と思いきや… 世界は俺にしばしの安息を与えることを忘れているような気がする ホント最近は何故こんなにも問題が次から次へと出て来るかな… 嘆いていても仕方がないのでとりあえず本題に入ろうか 俺たちは今、フェレンツェ博士の書斎にいる おっと、そういや研究所がどこにあるか言ってなかったかな? 場所は都内にある鳳条院グループ本社ビルの22階、そこが博士の研究所なんだが正式名称『武装神姫日常生活部門研究部』となっている つまりは技術会社である鳳条院グループの神姫関連の研究部という位置づけになっているんだが、こうなっている事についてはちゃんと理由がある 何度も言うようだが人型神姫インターフェイスは超極秘間での研究なんだけどフェレンツェ博士は有名人、それも国際的重要人物のお偉いさんなわけであるからして世界中から注目されてちゃ極秘も何もあったもんじゃない というわけでジジイの会社、鳳条院グループの技術開発指導員としての企業契約を来日理由としたんだとさ それにあわせて博士の研究場所は秘密漏洩対策として鳳条院グループの研究部に組み込んでいるのさ 技術会社なので研究設備、施設共に充実しているここなら博士としても文句はないだろう ………………が 「い、痛いじゃないかユ~ナぁ~;」 そんな博士も娘同然の神姫にいきなりドロップキックを喰らったら文句の一つも言いたくなるらしい それにしても頑丈だな、このオヤジ… 「自業自得だ!! 知ってたくせにアタシ達に黙ってやがって!!」 ユーナが言ってるのは-フィドヘル-が博士の娘であるエリー・カークランドだったと言うことと、-マハ-であるアルティに力を貸していたことを黙っていたことについてである ちなみにユーナはインターフェイスですよ 博士ふっ飛びましたよ五メートルほど… 「仕方ないだろ? 私が喋ってしまっては無粋というものだよ。それに彼女の気持ちには協力してあげたくなってしまったし…」 博士はそういうとアルティの方に視線を向けた 「…ユーナ、それぐらいにしてもらえないか? 博士には私達が口止めしていたんだ。あまり責めないであげてほしい」 「…………しゃぁねぇな」 ユーナはブスッとしたまま頭を掻きながら俺の横に戻ってくる 「…ありがとう」 と、アルティは静かに言った 「ご苦労様、ユーナ」 「スッキリしたよ~」 と、ウチの残りの娘二人はユーナの頭を撫でる 「あぁ~!! やめい! うっとおしい!!」 ちなみにノアとミコもインターフェイス 三人ともさっきまで別室でメンテナンスをやっていたのだ 「いやいや、助かったよアルティ君~」 「いえ、私達がご迷惑を掛けたばかりに…」 「いやいや、研究も手伝ってもらってるし。助かってるよ」 「アルも何か手伝ってるのか?」 「…ああ、データ処理や雑用だけどな」 「それでも助かってるんだよ?今は何かと忙しくてねぇ…」 確かに博士のディスクの上には資料が山積みになっている 「どうかしたんですか?」 「いや…この研究についての問題点をまとめていたんだ……」 「問題点…ですか?」 「うん…あ、インターフェイスの可動自体には問題は無いんだけどね…」 可動以外の…問題点……… 「どういうことか聞かせてもらえますか?」 「うん………明人君には言っておくべきかな…すまないが皆は席を…」 「はい、わかりました」 「OK~。ご主人様、後でね~♪」 「あぁ」 そう言って部屋を出て行くノア、ミコ、ユーナ、それにアルティ 「ノア、ミコ、ユーナ…ちょっといいか?」 「なーに? アルさん」 「おまえたちに話しておきたいことがある…」 部屋のドアが閉じられ、博士の書斎は俺と博士の二人きりになる 「……あいつらがいちゃマズイ話しなんですか?」 「うん…まぁね。それに彼女らは彼女らで話しがあるだろうし…ね」 「???」 どういうことだ? 「さてと、問題点なんだけど……単刀直入に言うと『インターフェイスが今の社会に及ぼす影響』なんだ…」 「インターフェイスが社会に及ぼす影響?」 「ああ、この際初めから順を追って話そう。少し長くなるからそこに…」 そういってソファー(この前ノアがぶん投げたヤツ)に座ることを薦められた俺は博士とテーブルを挟んで向かい合うように腰を下ろした 「私の研究は人と神姫のコミュニケーション…平たく言えば彼女らと彼女らのマスターとなる人との間にある物理的な『壁』を取り除こうというものなんだ。神姫はただのロボットではない。彼女らには感情がある。そうするとマスターと日々を共にする神姫達にはある感情が芽生える可能性が……というか普通に考えると当たり前のように思うんだが…研究者は理屈に振り回されてしまって見落としがちになってしまうことがある…もはや職業病だな、これは…」 博士は自嘲気味に軽くため息をついた 「ある…感情…ですか?」 「ああ、それはマスターに対する……愛、恋愛感情だ」 「恋愛感情…」 「そう」 まぁ、そういう話はよく聞くから心当たりがないわけじゃない 確かに神姫達も女の子、恋する気持ちがあってもおかしくないと思う 「しかし、彼女らは自分の持つマスターへの思いを伝えられないことが多い。『自分は人ではない。マスターとは結ばれはしない』という現実があるから…彼女達は内に秘めた淡い思いに蓋を閉めるしかない…」 現実…か 「それ以外の理由でも人と同じ体を必要としている娘がいるかもしれない。私は開発時から彼女達、神姫と関わってきた中で…どうしてもそのことが頭の隅に引っかかっていたんだ。それがこの研究を始めたきっかけかな…」 そういえば博士はMSS開発において日常生活の方面を担当していた開発者メンバーの一人でもあったな… 「私は彼女らに人と変わらぬ体を与えようと考えた。しかし、それこそ神の領域。神を重んじる者から見ればなんとも罰当たりな事かもしれない。そんな哲学的な話を抜きにしても簡単な話ではないんだ…コレを見てくれ」 博士がデスクの上から資料を一枚抜き取ると俺の前のテーブルに置いた その資料に記載されているのは次の通り、 問題一、インターフェイス使用により人工兵器として扱われる可能性について 問題二、生殖機能搭載における社会の風俗的見解について 問題三、受胎機能搭載における子供への社会的偏見、差別について と書いてある… 博士は自分のデスクの後ろに回り、大きなガラス越しに外の景色を眺めながら続きを語り始めた 「そこにあるのは今の大きな課題、『インターフェイスが今の社会に及ぼす影響』の一部さ。これについて議論しているんだけど…なかなか思うようには進まないよ。第三者の意見も知りたい所なんだけど…どうにも極秘というのはまどろっこしいねぇ。まぁ、それだけの内容なんだけど…」 たしかに…これは一夕一朝で解決する問題ではなさそうだ… 「このような問題が山積みなのが現状さ。今の段階では私一人の主張。世の中、そんな奇麗事だけでは動かない事は理解しているつもりだ」 その背中はいつものオチャラけた博士ではなく、天才科学者フェレンツェ・カークランドの背中だった 「博士…」 「インターフェイスは私のような者の指揮でも数年かければ今のように運用自体には問題なく進めることが出来た。技術的には可能となった時代なんだよ…昔、私もMSSの開発に関与していたが、なぜ神姫はあのサイズなんだと思う?」 「確かに…あれほどのAIの搭載を可能としているならヒューマノイドの実現もありそうだけど…」 「理由その一、大きくなればそれほど開発コストは掛かってしまう。今でさえ神姫はけしてお手頃とは言えないしね。私達はまず彼女らを世の中に普及させる事を考えていたからその事は大きな問題となったんだ。理由その二、『小さい自分だけのパートナー』というコンセプトが前提であった。まったくもってその通りだね! これは神姫の萌え要素として欠かせない…って、語り出すと3時間は要するので止めておこう…」 一瞬、元の博士に戻りかけたな… 「他にも理由はあるんだが…AI市販化の先駆けとしてお手ごろなサイズで誕生したのがMSS、武装神姫。私の言う『壁』を『あえて残した』ことは正解だっただろう。今はまだその時期ではないと当時の私もそのことに関しては異論はなかった。けれど私は彼女らの開発者の一人として…一児の父親として…愛する人と結ばれる幸せを彼女らにも与えてあげたい…」 考えるべきことは考えている…というところ、流石だなこの人は… 「大変ですね…」 「いつの時代も神に挑むのが科学者さ。コレが私の愛の形だからね…」 「……俺も何か手伝えますか?」 「いや、明人君はノアール達といつものように生活してくれればいいよ。だけどこの事を少しだけ頭に入れておいてほしいんだ。あ、答えを出せというわけじゃないから気負わなくていいからね」 「はぁ…」 「そうそう、アキースはノアたちと今まで通りの甘々な生活を楽しめばいいんだよ」 「いや、別に甘々というわけじゃ…って、おわぁ!!」 何か普通に答えてしまうところだったが、博士とは違う高い声に俺は初めて自分の横にフィドヘル…いや、エリーがいたことに気づいた 「やぁ。やっと気づいたの?」 「お、おまえ何時から居たんだよ…」 「ついさっき。あ、父さんお茶持ってきたよ」 そういってテーブルに緑茶と醤油せんべいの盆を出すエリー 「おお、ありがとうエリー。流石、私の愛娘だね」 いつもの博士に戻っちまったな…… 「はいはい、その台詞聞き飽きたってば…」 ゴキゲンな父親と半ば呆れ気味の娘 どうでもいいけど緑茶とせんべえ……二人は和風な外国人だった 「というかエリー、その呼び方はどうにかならないか?」 「ん? 『アキース』?」 「そう、それは偽名なんだ。俺だってちゃんと直しただろ?」 「ん~君がそういうなら…じゃ、あ・き・ひ・と♡」 俺の名前を呼びながら腕に擦り寄ってくる 「…なんだ?」 「あれ? 照れないの?」 ミコでなれてるからな…とは言わない それよりも… 「そういうことはもう少し成長してから言うんだな…」 正直ミコより小さいぞ、お前 「なっ! し、失礼しちゃうなぁ~」 「事実だろ」 「僕は今からなの! すぐに香憐みたいなスタイル抜群の超美人になるんだから、プリティな僕は今が見納めかもしれないよ~?」 香憐ねぇみたいな? はっ、この調子じゃ4、5年はこのままだろ どっからその自信がくるんだか… 「ところで明人君、アルティ君とはどうなの?」 いきなり話題を変える博士 「へ? どうって…」 「元鞘に納まったんじゃないのかい?」 元鞘って…どこでそんな日本語覚えたんですかあなたは… 「アルとは…今はそういうんじゃないですよ…」 「でも嫌いになったから別れたんじゃないんだろ?」 ん~、確かにそうなんだが… 「そうなんですけど…実はここに来る前にアルと二人で話したんです。俺たちにとってこの五年間は大きくて…今すぐお互い元には戻れないって。だからまたゼロから始めようってことになったんです」 「すると…恋人の前の段階ってことかい?」 「ええ、まぁ…」 「そうか…(それじゃ、あの子たちにもまだチャンスはあるってことか…)」 「父さん?」 「い、いや、なんでもないよ」 俺は部屋にあった時計を見て席を立つ 「じゃ、あいつらが待ってると思いますんでそろそろ…」 「そうか…また遊びにでも来てくれ。エリー、外まで送ってあげなさい」 「わかった。それじゃいこうか、明人」 「ああ、それじゃお邪魔しました」 またしても俺の腕にしがみ付いて来たエリーと共に笑顔で手を振る博士に見送られながら俺たちは博士の書斎を後にしたのだった 追記 何故か今日は家に帰ると三人の機嫌が良かった ご機嫌要素その一、夕食はいつもより豪華だった(作ったのはもちろんノア ご機嫌要素その二、いつもよりミコがべたべたに甘えてきた気がする ご機嫌要素?その三、いつもはミコが俺に甘えると怒るユーナが何故か今日は寛大だった ……なんでだろうか? 続く メインページへ このページの訪問者 -
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ウサギのナミダ ACT 0-6 ■ 「着けてみた感じは、どうだ?」 意外と悪くない。 自分の脚を全く別のモノに交換したにも関わらず、思ったほど違和感は感じない。 「いい……と思います」 むしろ、昨日まで練習で履いていた、ローラーブレードの方が違和感があった。 脚にはめた、その先の車輪は自分の一部ではない感じだった。 でも、新たにマスターが用意してくれた、この脚部パーツは、つま先から車輪まで、文字通り身体の一部であるように思える。 マスターが作ってくれた、オリジナルの脚部パーツを、今日初めて装着した。 わたしの脚は、太ももの接続部を境に、ごつい機械の脚に変貌していた。 足首の部分には、前後に車輪がついている。 後輪の方が大きくて、後ろに張り出していた。 足首の中には超電動モーターが入っており、車輪による高速移動が可能なはずだ。 これが、わたしが与えられた武装。 マスターが時間をかけて、パーツを集め、組み上げた、オリジナルの装備。 わたしはこの十日ほど、ローラーブレードの特訓に明け暮れた。 装備が完成するまでに、「滑走する」動作をメモリにたたき込んだ。 主な動作は、アイススケートを中心にしたメニューだったが、それもフィギュアスケートやスピードスケート、アイスホッケーに至るまで多彩なメニューが用意された。 それだけではない。スキー競技もアルペンからフリースタイル、ジャンプにクロスカントリー、エアリアルまで、動作を真似た。 もちろん、ローラーブレードもエックスゲームを参考に、メニューが用意された。 これらはすべて、今日渡されたこの装備を使いこなすためのものだ。 「でも……脚に車輪をつけた装備もすでにあるのでは?」 「確かにな。あるにはあるが、種類が少ない。俺が望む性能を再現するものは、俺の知る限りない」 「なぜ、ですか?」 「自由度の問題、だろう」 「自由度……?」 「装備、そして戦闘行動の自由度だ」 マスターは、わたしのこうした疑問に、とても丁寧に答えてくれる。 わたしがマスターの意図を理解してバトルできるように、との配慮だそうだ。 マスターは相変わらず無表情だったけれど、たくさんの言葉をかけてもらえることが、わたしは嬉しかった。 「エックスゲームのような機動を実現するには、装備が制限される。重い武器はもちろん、動きを阻害するようなかさばる装備は身につけられない。自然、小火器や格闘武器に限られる。 重装備にすれば、火力は得られるが、独特の機動は得ることができない。 それに、結局は地上戦用装備にならざるを得ない。 武装神姫は装備を付け換えるだけで、簡単に空を飛ぶことができる。そっちの方が、戦闘機動の自由度は高い。 ローラーブレード型にこだわらなくたって、強力な脚部パーツはたくさんある。そっちの方が、装備と機動力を両立させるには適している。 だから、足首に車輪を装備している神姫はすべからく、移動するために装備しているのであって、戦闘機動をするためじゃない」 つまり、わたしの脚部パーツを使うには、重装備では意味がない、他の装備を考えた方が攻撃力と機動力のバランスがいい、ということだ。 「それなら、なんで……」 わたしは、沸き上がった疑問を、素直に口にしてみた。 「なんで、マスターは、ローラーブレード型の装備を作ったんですか?」 理由の一つは、わかる。 それは誰も使わない装備であり、誰もしない戦い方だからだ。 誰もしない戦いをすることが、マスターの夢だからだ。 けれど、マスターから語られた理由は、意外なものだった。 「……美しいからだ」 「……え?」 「滑走する競技というのは、美しさを競う競技でもある。 フィギュアスケートはその代表だ。 スキーでも、モーグルはスピードだけでなく、滑走時の姿勢や、エアの技、着地の出来を採点される。 スキージャンプも、飛行姿勢や着地姿勢を採点されるんだ。 あらゆるエックスゲームは観客を魅了することに主眼が置かれている。 『滑走』という行動をバトルに取り入れることで、より美しく、より魅せる戦いができるんじゃないか、と考えている。 ……そんなところだな」 前にマスターは言っていた。 『自分たちだけの戦い方で、ギャラリーを魅了できれば最高だ』と。 わたしに与えられたこの脚部パーツは、その夢に直結している。 それにしても、マスターが『美しいから』という理由でこの装備を作ったことが、なんとなくおかしかった。 でも、笑うのは失礼なので、マスターに見えないように、顔を伏せてこっそりと微笑んだ。 □ ティアに答えた『美しいから』という理由は、我ながらちょっと気恥ずかしかった。 だが本心だ。 圧倒的な火力で殲滅するよりも、限られた手段を駆使して勝利する方が、心に残る。 それが美しい動作ならばなおさらだ。 「さあ、テストを始めよう」 俺はティアに言った。 この十日間、ティアにはローラーブレードの特訓を施した。 いまでは、エックスゲームのトッププレイヤーも顔負けの腕前だ。 それだけ習熟が早いのには理由がある。 神姫は様々な動作を記録し、それを忠実に再現することができる。 それをさらに応用して、条件を少しづつ変えて、動作をすることも可能だ。 事前にシミュレーションを行っておけば、さらに精度は高くなる。 そうやって、成功の条件を積み重ねていけば、人間には修得が難しい技も、神姫は難なく修得できるのだ。 もちろん、武装神姫素体の運動性能の高さもそれを手伝っている。 ティアは緊張の面持ちだった。 スピードスケートの選手のようにスタート姿勢を取る。 「行きます!」 高い声と共に、一気に走り出した。 場所は俺の部屋の中。 片づけた部屋の最長距離を走ろうとする。 ティアの行く手には障害物はない。 超電動モーターがオンになり、ホイールが回転し始める。 乾いたホイール音が響いた。 「わっ、わわわっ!」 素っ頓狂なティアの声。 両足首が身体よりも先に出ようとしている。 体のバランスが一気に崩れた。 ティアは尻餅をつき、床の上にすっころんだ。 「いったぁ……」 ……やっぱりそうなったか。 ティアは涙目になりながら、小さなお尻をさすっている。 ティアはローラーブレードを操るように走り出したのだろうが、車輪が自分で回転するので、勝手が違ったのだ。 自転車とバイクでは、乗り方が違うのと同じだ。 だが、使いこなせれば、より速く、自由に滑走することが出来るはずだ。 ■ 訓練を始めてから三時間経った。 そのころには、ローラーブレードと同じように、このレッグパーツを操れるようになっていた。 レッグパーツに慣れてみれば、こちらの方ができることの幅が広いことが実感できる。 ローラーブレードと違うのは、わたしの意志で、ホイールの回転を自在に操作できること。 回転数を上げるのも下げるのも、逆回転すらさせるのも自在だ。 武装を直接コントロールできる神姫ならではの能力だった。 これによって、停止している状態からその場ですぐにスピンしたり、直立したまま姿勢を変えずに移動したりもできる。 ホイールにモーターがついているから、スピードもさらに出すことができる。 もしかすると、いままで思いもしなかった動きができるかも知れない。 その週末、土曜日の朝。 いつものように、わたしはマスターに連れられて、近所の、あの広い公園まで、散歩に来た。 いつもと違うのは、わたしがあの新しいレッグパーツを装着していること。 なぜ、レッグパーツを装着して連れ出されたんだろう? わたしはマスターの言うことに従っただけだけれど、その理由はなんとなく聞きそびれてしまっていた。 今日も外は快晴。 やわらかな風が、わたしの頬をなでて、吹き抜けていく。 気持ちがいい。 わたしは、マスターのシャツの胸ポケットで、マスターが刻む歩みのリズムを感じていた。 マスターは公園に着くと、広場のすみにあるベンチに腰掛けた。 公園の広場は、芝生が敷き詰めてある広い場所。芝生はよく手入れされており、緑がきれいだった。 その周りには遊歩道が整備されている。 コンクリートの遊歩道は、普通の道路よりでこぼこが少なくて、滑らかな感じがする。 マスターは、胸ポケットに手の甲をかざし、わたしに出てくるように促した。 何が始まるというのだろう? 胸ポケットから出たわたしを、マスターは遊歩道に降ろした。 そして、マスターの口から出た言葉は、意外なものだった。 「思い切り、走ってこい」 「……え?」 「お前が好きなように、走りたいだけ、走ってこい」 わたしが、好きなように……? マスターの意図が理解できないでいる。 「あの……わたしが自由に走って、何の意味が……?」 「走ってみれば、わかる」 わたしは改めて、自分が立っている遊歩道のまわりを見渡した。 今、わたしの目の前には、広大な地平が広がっていた。 ここなら、壁に阻まれることもなく、どこまでも走ることができる。 わたしは、もう一度マスターを見上げた。 マスターはわたしに視線を合わせる。 早く行け、と促している。 何か不安だった。 マスターの具体的な指示なしに、自由に滑走するということが、初めての体験だったから。 それでも、わたしは遊歩道の先を見据え、スタートの構えを取る。 「行きます……!」 頭の中でカウント。 三、二、一、スタート。 わたしはまず、全力で走ってみることにした。 ここなら壁に阻まれる心配もなく、どこまでも加速できる。 スピードスケートの選手のように、前かがみになって両腕を振り、左右の脚で大きく蹴り出す。 蹴り出すときに、重心を乗せた方の脚のホイールを加速させる。 今まで感じたことのない、爆発的な加速。 疾走する。 流れてゆく。 遊歩道に沿って並んでいる木々が、形を失って、わたしの後方へと流れてゆく。 風が。 風が左右にわかれ、わたしの横を吹き抜ける。 ああ……わたしは…… いま、風になっているんだ。 ものすごい解放感がわたしを包み込む。 ただ走るという行為が、こんなにも自由なものだったなんて! わたしは、夢中になって走り出した。 一歩ごと、わたしは身も心も風に溶けてゆくようだった。 気持ちの赴くままにジャンプ。 つむじ風になったように、四回転。 あっさり決まって、着地。 驚くほど簡単だった。 ローラーブレードの時は、相当練習して、やっとできるようになったというのに。 マスターのくれたレッグパーツは、わたしの想像以上のポテンシャルを秘めている。 それを十二分に引き出すことができたら……あらゆる滑走競技の技が可能なはず……それ以上のことだって。 ならば、試してみよう。 いまのわたしに可能な最高のトリックを。 もうすぐ、公園の遊歩道を一周する。 試すのはマスターの目の前。 わたしは、さらに加速する。 □ ティアが公園を一回りしてきた。 あいつはどんな風に感じたろうか。 なによりも、滑走することが楽しいと、気持ちがいいと、感じてくれれば、それでいい。 ティアをここで走らせることは、それが目的だった。 深い意味はない。 だが、俺が始めてスキーをしたときのような嬉しさを感じて欲しかったのだ。 滑走するということは、日常から解き放たれ、自由になる瞬間なのだ、と。 ティアが俺のいる方へと疾走してくる。 スピードを落とす気配がまったくない。 ……おいおい、何をするつもりだ? 俺の目前、ティアは身体をひねると、スピードはそのままに、片足で踏み切った。 ジャンプ。 高い。 フィギュアスケートの選手のように、両腕を身体に寄せ、回転する。 だが、その回転は複雑で、身体をロールさせながら宙返りもしている。 踏み切りはフィギュアスケートだったが、空中の回転はフリースタイルスキーのエアリアルだ。 木の葉のように宙を舞う。 人間ではありえない長い滞空時間の後、ティアはきれいに着地を決めた。 「あはっ!」 ティアの、短い笑い声が、聞こえた。 あいつ、笑ったのか。 そうか。 知らず、俺の口元からも笑みがこぼれる。 ティアが俺の予想を超える、超絶の技を決めたことも嬉しかった。 でも、それ以上に、ティアが笑えたことが嬉しい。 今まで頑なだった彼女の心が、確かに喜びを感じている証拠だったから。 ■ わたしは、公園をさらに半周して折り返し、マスターの元に戻ってきた。 もう、このレッグパーツの動作は掴んでいた。 ランドスピナーを加速させ、わたしはまた風に乗る。 マスターが待つ公園のベンチの手前でジャンプ! 月面宙返りを決めて、ベンチの上に着地した。 膝を着いていたわたしの頭上から、拍手の音が降り注いだ。 マスター。 マスターが、わたしに拍手をしてくれている……。 見上げると、マスターはいままで見たこともないような笑顔で、わたしを迎えてくれていた。 「想像以上だ。素晴らしかった」 その言葉が、どんなに誇らしかっただろう! わたしは嬉しくて、とても嬉しくて、マスターに気持ちを伝えたいと思う。 「あ、あの……すごく、すごく、楽しかったんです! 走ることが、楽しくて、気持ちよくて、自由で、嬉しくて……!」 自分の口から転がり出た言葉が、あまりにもとりとめなくて、いま興奮していることを自覚する。 マスターは、そんなわたしの拙い言葉を聞いてくれた。 いつものまっすぐな視線でわたしを見ながら。 そして、微笑みを浮かべながら、こうまとめた。 「そのレッグパーツ、気に入ったか?」 「はいっ!」 それはよかった、とマスターはまた笑ってくれた。 次へ> トップページに戻る
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最強って何かね ―――――――――――― ☢ CAUTION!! ☢ ―――――――――――― 以下の御作品を愛読されている方は先に進むことをご遠慮ください。 武装食堂 キズナのキセキ 深み填りと這上姫 場合によっては意図されていない、悪い方向に読み取られる可能性があるため、閲覧をご遠慮頂くものです。 残虐・卑猥な行為などが理由ではありません。 強いて言うならばコタマがマシロに腹パンされる程度の残虐さです。 ネタバレを含む場合があります。 また神姫や固有名称を(無断で)お借りしています。 登場はしません。 尚、TVアニメ武装神姫 第11話「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」のネタバレを少し含んでいます。 茶室に集まった私とメル、コタマ姉さん、マシロ姉さんでアニメの次回予告まで見終えて、コタマ姉さんが大きなあくびをした時だった。 テレビを消したメルは唐突にこう問うた。 「でさ。実際はどうなのさマシロ姉。今の最強の神姫って誰なの?」 ◆――――◆ 「言うまでもないでしょう。一番は公式戦で優勝経験のあるアーンヴァル型アルテミスかストラーフ型のビクトリア(ヴィクトリア?)。二番は――名前は忘れましたが、あの世界二位(笑)のエウクランテでよいのではないですか」 「マシロ姉さんが(笑)とか使わないでください。キャラが崩れます」 「そーじゃなくてさ。ほら、マシロ姉だってそのアルテミスとほとんど互角だったでしょ。非公式戦も含めて、誰が最強かってこと」 メルの言うバトルというのは、あれはマシロ姉さんが私たちを特別に、対アルテミスさん戦に招待してくれた時だった。 強い神姫の非公開でないバトルの観客席はいつも早い者勝ちの超満員で、初めて生で見た武装神姫の頂点クラスのバトルは思い出しただけでも武者震いしてしまう。 アルテミスさんの十八番『先々の閃』を真っ向から迎え撃ったマシロ姉さんの技はなんとビックリ! 私の『ブレードジェット』を使った突進だった。 といっても二人の激突は文字通り目にも留まらぬ速さで、それと知っていなかったら「離れてた二人が消えたと思ったら中間地点から衝撃波が出た」ようにしか見えなかったのだろうけど。 あの時のバトルは大接戦で、早い段階で十二の騎士のうち半数くらいを落とされていたマシロ姉さんが惜しくも負けてしまったけど、身近にいる信じられないくらい強い神姫の一歩も譲らない戦いに私は大きな歓声と拍手を送ったのだった。 「マシロ姉だけじゃなくて他の『デウス・エクス・マキナ』とか、世の中には隠れた強い神姫がたくさんいるんでしょ。ぜ~んぶひっくるめて、誰が最強かってこと」 「私も興味あります。実はマシロ姉さん、最終的にアルテミスさんに勝ち越してたりしてないんですか」 「あなた達は最強の神姫をそう簡単に決められると……まぁ、いいでしょう。簡単に『最強』という言葉を使わないよう知っておかねばなりません。コタマも良い機会です。聞いていきなさい」 眠い目をこすりながら立ち去ろうとしたコタマ姉さんの尻尾を、マシロ姉さんはむんずと掴んだ。 ◆――――◆ 「まずは――そうですね。エル殿とメル殿は勘違いをしているようですが、『デウス・エクス・マキナ』という括りはあなた方が想像しているよりずっと意味の無い、名ばかりのものです」 「だろうね」とコタマ姉さんは知った風にうなずいた。 「『デウス・エクス・マキナ』がまとまりのある集団だったら、マシロも少しは大人しくなってたろうもん」 無視したマシロ姉さんは続けた。 「そもそも『デウス・エクス・マキナ』とは、『京都六華仙』に対抗意識を燃やした誰かが、修羅の国でも似たような集団を作ろうと勝手に神姫を選んだだけ……らしいに過ぎません」 「らしい? その誰かって、『デウス・エクス・マキナ』の中の誰かじゃないの?」 メルの問に対してマシロ姉さんは首を横に振った。 「誰なのかは分かっていませんが、その線は面子を見る限り薄いでしょう。【神様が暇つぶしに作った】、【マオチャオネットワークによって生み出された】などという噂すらあるくらいですから。私もいつの間にか一人に数えられていて首を捻ったくらいです。当人への告知すら未だになく、噂だけが独り歩きして実体化を果たしてしまったような状態です。まあ、私が知る限り実力だけは十分伴った神姫が選ばれているので、見る目のない者が作った、というわけではなさそうですが」 「マシロ姉さんを含めて五人いるんですよね」 「ええ。初めに選ばれていたのは四人でしたが。私の他に、 『清水研究室 室長兼第一デスク長』ゴクラク。 『大魔法少女』アリベ。 そして後に追加で選ばれたのが『火葬』ハルヴァヤ。あと一人は知りません」 「知りませんってアンタ、そんなてきとーでいいの?」 「誰も知らないのだから仕方がないでしょう。もしかすると噂の【神様】とやらかもしれませんが」 「なんか、本当にいいかげんだね。『京都六華仙』に対抗する以前のレベルだよ。この前の【貧乳の乱】の時に遊びに来てた牡丹が六華仙の一人なんだよね。京都市だとちゃんと取りまとめ役やってるんだってよ」 「それただのヤ◯ザじゃん」というコタマ姉さんのツッコミには「修羅の国のコタマ姉さんがそれを言いますか」と適切に返した。 「いえエル殿、コタマはこれでも役に立っているのですよ。武装神姫のバトルとは端的に言えば強弱上下を決めるものですから、違法改造神姫であろうと何であろうと粛清できる実力者が目を光らせておかなければ、必ずといっていいほど犯罪に手を染める愚者が出て来るのです」 「修羅の国のマシロ姉さんがそれを言いますか」と再び適切な返しを挟んだのだけれど、マシロ姉さんには聞こえなかったらしく、話は続いた。 「私は竹櫛家を守ることのみが使命ですし、ゴクラクは水面下で怪しげな動きをしていて、ハルヴァヤは私たちのレベルから身を引いてしまっています。勿論、正体不明の神姫は言うに及ばずです。なのでこの地域が比較的安定しているのは、誰彼構わず挑まれた勝負に負けない、つまりパワーバランサーのような役割を持つコタマと、大規模かつ熱狂的なファンクラブを持つアリベの二人が表立って動いているからなのです」 「なるほど。だからこの地域では悪事が最小限に留まっているんですね」 「「「修羅の国のアルトレーネがそれを言うな」」」 三人からの一斉攻撃を受けた。 言われてみれば第n次戦乙女戦争とか名物化してるけど、私一人が悪いわけじゃないのに……。 「てことは、真面目に戦ってるアタシが実質的な統治者ってわけ? ウワハハハ、苦しゅうないぜ。オマエら頭が高いんじゃねーか?」 「タマちゃんの背が低すぎるので見下ろす形になっちゃうんです」 「誰がタマちゃんかコラァ!」 私に飛びかかってきたコタマ姉さんはしかし、空中でマシロ姉さんに尻尾を掴まれて体の前面を床に打ち付けた。ビターン! という感じで。 「にゃにしやかんたてめへ!」 鼻に深刻なダメージを負ったらしく手で押さえながら涙目になったコタマ姉さんを、マシロ姉さんは華麗に無視した。 「さて、ここで話を元に戻しましょう。真に最強の神姫とは誰か、という話でしたが残念ながら現状では特定することは不可能です。候補者をあらゆる場所から集めて天文学的数字の回数だけバトルを行ったところで優勝者は決まりません」 「死ねやぁ!」 コタマ姉さんは鼻を押さえたままドロップキックをはなった! しかしマシロ姉さんはこうげきをかわした! コタマ姉さんは再び床に落下してダメージをうけた! 「そうなってしまった原因はコタマ、あなたにあるのです」 築地のマグロのようになったコタマ姉さんを指さして断言するマシロ姉さん。 なんとなくだが、強い神姫になるためには多少の事には動じず無視できる肝っ玉CSCが必要不可欠であるような気がした。 ◆――――◆ コタマ姉さんが落ち着いてから、マシロ姉さんは改めて言い直した。 「コタマ、あなたが矛盾を作ってしまったせいで最強の神姫を決めることができないのです」 「意味が分からん。アタシが何したって? いつ、どこで、なにを」 「以前あなたは妹君と、他人のトレーニングに付き合ってやったと言っていましたね」 「んん……? ああ思い出した。ミスティのことか」 「誰? 聞いたことあるようなないような名前だけど。コタマ姉、何やらかしたの?」 「なんでやらかした前提で話してんだよ。むしろやらかされた側だっての。アタシがまだハーモニーグレイスだった時にさ、『狂乱の聖女』っていう悪者神姫がいて、ソイツを始末する旅か武者修行か何かに出てたミスティがアタシの噂を聞いて『狂乱の聖女』じゃないかって確認に来たんだ。武装が似てたらしい。んで、アタシは無敵の『ドールマスター』様だってバトルで教えてやったら、次は『狂乱の聖女』を倒すために秘密のトレーニングをするから同じハーモニーグレイスで似た武装のアタシに仮想敵になれ、って話を持ちかけられたってワケ。他にも大勢の連中がミスティの練習に付き合ってて……鉄子ちゃんもどーしてわざわざ付き合ってやるかねえ」 「コタマ姉さんが仮想敵って……その『狂乱の聖女』さん? よっぽど強い神姫なんですね」 「それが腹立たしい話でさー。だったらアタシが直接ソイツを始末してやるって乗ってやったのに――いやまあ同じハーモニーグレイスで強いヤツってんなら上下を決めておきたかったってのもあったけど――ミスティのマスターがアタシじゃ勝てないとか言いだしたんだ。筐体の中でヌクヌク温室バトルやってるヌルい神姫じゃ勝てない、ってさ。よりにもよってシスターの善意を断るどころか、『ドールマスター』をふやけた煎餅扱いだぜ? 信じられるか?」 「信じられませんね」と言ったのは意外なことにマシロ姉さんだった。 まさか調子に乗ったコタマ姉さんに同調するなんて、熱でもあるんじゃ……と思ってマシロ姉さんの顔を覗きこんでみると、風邪どころか眉間にしわをよせてコタマ姉さんを親の敵か何かのように睨んでいた。 透き通ったエメラルド色で綺麗だったはずの瞳がドス黒く変色していた。 「まったく信じられませんコタマ。妹君を守る立場にありながら、自分より強いと言われた神姫を――よりにもよって罪を犯した神姫を見逃した?」 「いや、見逃したっていうか、その時点じゃ居場所すら分かってなかったらしくて……何よ、なんでそんなに睨むのさ」 「居場所が分からなければ突き止めればいいだけの話でしょうが。妹君が何処でアルバイトをしているか知らないわけでもあるまいに。答えなさいコタマ、何故その時点で『狂乱の聖女』とやらを始末しなかった。赤の他人のトレーニングに付き合ったことで僅かでも妹君はその犯罪者と繋がりを持つことになってしまった。つまり危険に晒したということだ。仮に本当にコタマの手に余る相手であろうとも私ならばどうとでもなる。しかしあなたは何もしなかった。妹君を危険に晒したまま! 答えろコタマ! どうして何も行動を起こさなかった!」 床に拳が強く叩きつけられ、茶室全体が揺れた。 部屋の空気は凍りついたように冷たく恐ろしくなっていた。 「だ、だだだって……その……あっちにも、じ、事情があったし……た、ただの他人が手を出したら……」 私とメルはお互いに抱きつきかばい合いながら震えるしかなかった。 コタマ姉さんが怯えるほどの殺気。 レラカムイの体はもうとっくに降参の姿勢で、頭の大きな耳と長い尻尾が垂れ下がっている。 マシロ姉さんが両手をゆっくりと肩の高さに上げた。 コタマ姉さんが殺される。 制止に入りたくても体が怯えきって動いてくれない。 そして怒れるクーフランの掌は五指を開いたまま上に向けられ――。 「それで正解です。他所様のストーリーを崩してはなりません」 アメリカンジョークでも言うかのように肩を竦めたマシロ姉さんは殺気を霧散させた。 緊張が解けた瞬間、武装した私たち三人が一斉にマシロ姉さんに襲いかかったのは言うまでもない。 ◆――――◆ 「寿命が縮まった……五年分くらい」 「私もです……後でマスター経由で鉄子さんにチンコロします。絶対します」 「許してください、少々やりすぎたのは反省しています。昨日見たドラマの刑事役がなかなか堂に入った演技をしていまして、それが頭にあったものでついつい。お詫びに後でとっておきのヂェリーをご馳走しますから」 「ヂェリーごときで許せるかボケ」とコタマ姉さんは言いはしたけれど、声には全然力が入っていなかった。 私とメルの寿命が五年縮んだとしたら、殺気を直接当てられたコタマ姉さんの寿命はもって数ヶ月レベルなんだろう。 さっき自分で言ってた通りの『ドールマスター(ふやけた煎餅Ver.)』だ。 そんな私たちを見て悪びれるどころか自分の演技力に満足したらしいマシロ姉さんは、「それはさておき」と私たちの殺気を軽く受け流した。 「コタマの言った通り、他人のストーリーに口を挟んではいけません。というより、口出しできない、と言い表したほうが正しいのは分かりますね。仮にコタマがその『狂乱の聖女』とやらを倒してしまったなら話が余計にややこしくなり、妹君は非難される立場に立たされるでしょう。他にも――」 マシロ姉さんはコタマ姉さん、メル、私の順に見回した。 「あなた達とハナコ殿、そして『京都六華仙』の一人は【貧乳の乱】に参加したそうですね」 「『参加』? 今オマエ『参加』っつったか? それはアタシが好き好んで加わったみたいなニュアンスか?」 メルは静かに私の側から離れてコタマ姉さん側についた。 けれどコタマ姉さんは「アイネスはアニメじゃ谷間があっただろうがこのクソ」とメルを突き返してきた。 ああ哀れなりレラカムイ。 せめてほんの数ミリでも私の胸を分けてあげることができたら。 「さらにコタマは妹君の大学で他の学生に自分勝手な因縁を付けて、メル殿を巻き込んでの勝負の最中ではないですか」 「当たり前だ。『双姫主』だか何だか知らねーけど、鉄子ちゃんのことを『鉄子』って呼び捨てで表記しやがったんだ。鉄子ちゃんのことを呼び捨てしてもいいのはアタシと竹櫛家の連中だけだ。もう修正されてるけどさ」 プンスカ怒りながらコタマ姉さんはそう言った。 この時も鉄子さんは巻き込まれているようだけど、相手が危険じゃなければマシロ姉さん的には問題はないらしく(コタマ姉さんにイチャモン付けられた相手の方は迷惑この上ないだろうけど)、再びご自慢の演技力を発揮しようとはしなかった。 「以上で三つ、例を挙げました。共通点は『コタマが関わっている』ことです。これが矛盾を生じさせてしまっているのです」 「矛盾? 何がですか?」 「先に言ったでしょう。コタマが矛盾点となっていると」 「いえ、ですからその前に……」 「何の話だったっけ?」とメルが私の言いたいことを言ってくれた。 「最強の神姫は誰かと聞いたのはあなたでしょう。そして結論を出すことが不可能であることと、その理由がコタマが矛盾を発生させたためであること。具体例を挙げて理解しやすいよう説明していたのに根本を忘れるとは何事ですか」 「「「誰のせいだ」」」 ◆――――◆ 「アタシが矛盾点? 意味わからん」 「では順を追って説明しましょう」 もうアニメを見終えてから随分と時間が過ぎていて、そろそろ朝日が昇ってくる時間になる。 怖がらせられたり暴れたりしたせいで眠気は吹っ飛んでしまっているけど、重度の疲労が重くのしかかってきている。 メルもコタマ姉さんも顔を見れば私と同じく疲れているようで、マシロ姉さんだけがすまし顔だった。 「まず『狂乱の聖女』の件。コタマはトレーニングに付き合ったと言いましたが、その場で一度でも敗北しましたか?」 「まさか。『FTD3』を使うまでもなかった。しかもそんときゃまだアタシはハーモニーグレイスだったし、今のレラカムイの体ならファーストかセカンドのどっちか片方でも十分だろうね。ま、あっちも修行で当然レベルアップしてるだろうけどさ」 「つまり『狂乱の聖女』は、そのレベルでトレーニングや専用対策を行うことで対応できる神姫ということになりますね。では次に【貧乳の乱】」 コタマ姉さんの大きな耳がピクッと動いた。 ハーモニーグレイスの胸が大きかった分が、今の平坦な胸に対するコンプレックスを加速させているのだろう。 「この一件が最大の問題です。エルメル姉妹も戦闘には加わったようですが、集団 対 集団の中で大きな戦果を上げたのはコタマ、ハナコ殿、そして『京都六華仙』が一人、『遊びの達人』だったそうではないですか」 「それが何さ」 「『京都六華仙』とは私を含む『デウス・エクス・マキナ』の元になった存在であり、京都市の頂点なのです。通名が『遊びの達人』ならば読んで字の如く、純粋にお遊びに興じただけかもしれませんが、なぜコタマ如きに肩を並べているのですか。『京都六華仙』ならば事のついでにコタマにも灸を据えるくらいの気概を見せて欲しいものです」 「レラカムイパンチ!」 コタマ姉さんの短い右腕から繰り出されたストレートはしかし、マシロ姉さんにあっさりはたかれた。 「最後に目下進行中の、コタマが一方的に喧嘩を売った勝負。『双姫主』なる称号を持つ相手だそうですが、妹君にこれ以上恥をかかせないためにも当然、勝つのでしょうね?」 「知らんよ。作者に訊け」 「はぁ……」とマシロ姉さんはこれ見よがしにため息をついた。 「情けない。ここで『作者のストーリーなんざ知ったことか。楽勝だ』くらいの事を言えないのですか」 「オマエ、それさっき自分で言ってたことと矛盾するじゃねえか。他人のストーリーに口を挟むなっつったのを忘れたか、この健忘症め」 「あ、『矛盾』」 メルがそう呟いた時、マシロ姉さんは我が意を得たりとばかりに人差し指を立てた。 「その通り、矛盾しているのです。コタマは私たちの地域におけるパワーバランサーでありながら、勝つか負けるかフタを開けてみなければ分からない状況にあります。メル殿はともかくとして、妹君はなぜコタマより確実に強い私に声をかけて下さらなかったのやら」 「なんだ、一緒に遊びたかったのなら素直にそう言えばよかったのに。この恥ずかしがり屋さんめ」 「クーフランパンチ!」 並のスペックじゃないマシロ姉さんの右ストレートはコタマ姉さんの防御を軽く突き破って、みぞおちに食い込んだ。 口から形容し難いものを吐き出したコタマ姉さんは前のめりに倒れ、再び築地のマグロになってしまった。 安らかな眠りについたコタマ姉さんのことを意に介さず、マシロ姉さんは話を続けた。 私は竹櫛家が恐ろしい。 「他にも地理的な矛盾なども数えきれないほどあるのですが、そこには目を瞑りましょう。修羅の国、京都、北は北海道から南は沖縄までお構いなく、パワーバランスが滅茶苦茶になってしまっているのです。それもこれもすべてコタマのせいで。よってメル殿の『最強の神姫は誰か』という問に対しての答えを出すことはできません。ご理解頂けたでしょうか」 「あー……うん、理解したよ」 メルの目はうつ伏せに倒れて……もとい眠っているコタマ姉さんに注がれている。 パワーバランサーをパンチ一発で黙らせるマシロ姉の存在こそ最大の矛盾じゃない? と言ってコタマ姉さんの二の舞にはなりたくないのだろう。 「それは何よりです。説明した甲斐があったというもの――おや、もうこんな時間でしたか。話が長くなってしまいましたね。ではこれにて解散としましょう。約束のとっておきのヂェリーは次の機会にお渡しします。では失礼」 立ち上がったマシロ姉さんはコタマ姉さんの尻尾をつかみ、ズルズルと引きずったまま茶室から去っていった。 ポツンと残された私とメル。 「ねえ、エル姉」 平坦な声でメルが問うた。 「結局のところさ、最強の神姫って誰?」 私に聞かれても困る。 けれど……。 「とりあえずマシロ姉さんってことにしておきませんか? それで少しは夢見も良くなると思います」 「そだね。そうしとこう」 なんだかよく分からなかったけれど、一つだけ確かなことを言えるようになった。 『最強』という言葉を気安く使ってはならない。 『15cm程度の死闘』の時事ネタ話の中で初めて事前に作文しました。 などという事はどうでもよくて、アニメの「今夜決定!最強神姫は誰だ!?」なる予告を見て、修羅の国視点で考えてみました。 もうちょっと条件を絞ると、 1.『デウス・エクス・マキナ』は、ばるかんさんの『京都六華仙』から発想をパク・・・お借りしている。すなわち強さはだいたい同等。 2.トミすけさんの『狂乱の聖女』対策内で多作品が同時にリンクしているため、最良の基準点になると期待する(という願望)。 3.主人公補正、ストーリー補正、愛の力補正、脇役補正、かませ犬補正、死亡フラグ補正 etc.・・・それら一切を排除。例えば、マシロはコタマに絶対負けない、コタマはエルメル姉妹に絶対負けない、Lv.100ミュウツーはLv.1キャタピーに絶対負けない、といった感じ。 4.他所様だからといって依怙贔屓しない(これ一番重要)。有名神姫のミスティを相手取ってもタマちゃんは意地でも勝つ。 温かい缶コーヒーを飲みつつ、これらの条件下で深く吟味した結果・・・結論を出すのは不可能ということが分かりました。 唯一の架け橋であるタマちゃんの存在が逆に、どうしても邪魔になってしまうのです。 『ドールマスター』コタマを扱い頂いた作品は4つ。 そのうち、ALCさんのエウクランテ型エニはコタマと衝突する前に戦乙女の群れに飲み込まれてしまったため、コタマ本人がちょびっとでも関わったのは実質3作品。 3作品くらいならなんとか順位を決められるんじゃないか。そう思い上がることもせずに、あくまで修羅の国に基準を置いて1つずつブロックを積み上げていったのですが、積み上げクレーン役のコタマが矛盾を抱えていてはどうしようもありません。 また、『15cm程度の死闘』という異分子を除けばどうか? は自分の存在意義が無くなるので却下(旧掲示板を開く限り不可能だと見られますが)。 まことに遺憾なことです。 もう残す手段は、彗星の如く表れた天才がスパパッとすべてのストーリーをまとめ上げ、頂点を決めてくれることに期待する他ありません。 暫定的かつ勝手に最強となってしまったクーフラン型『ナイツ・オブ・ラウンド』マシロの座を奪う神姫の登場にも期待したいところです。 ただし違法な手段で這い寄ろうとする神姫相手には、にゃーの怨念が取り憑いたマシロがなりふり構わず殺しにかかります。 それもこれも、ここまで読んで頂けた方が一人でもいらっしゃればの話ですが・・・。 ところでアニメの感想ですが、ヴァローナを愛でたい。 思い出したように出てきたハムスターもいいけどヴァローナを愛でたい。 胸が若干盛られてたような気がしたけど、それでもいいからヴァローナを愛でたい。 15cm程度の死闘トップへ
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紅い巨神・・・皆川が『ギガンティック』と呼んだそれは、バーチャルの空に向かって大きく吼えた 自らが生まれた事を誇る様に、或いは、呪う様に・・・ 「か・・・墨?なの・・・?」 『ギガンティック』の黄金の瞳がニビルを見据える ごうっ!! 「!!」 その一撃をかわせたのは全くの偶然だった 体が反射的に逃げた方向に、偶々手が来なかっただけの話で、攻撃そのものは全く見切れたものではなかった・・・それが左の爪を振ったのだと気付いたのすら攻撃直後だった その動きの速さは『G』の「Gアーム」・・・キャロラインが「ジェノサイドナックル」と呼んだ・・・に匹敵するものだった 神姫に十数倍するその体躯で神姫の最高速度近い攻撃を繰り出してきたと言う事は、この巨神が神姫を遥かに上回る速さを持っている事を意味した 「・・・あ・・・あぁぁ」 それは絶望的な戦力差と言わざるを得なかった 「奈落の底」 「画面が見えない・・・姉さま、どうなったんだろう?」 皆川は、機械をチェックすると言って出て行ってしまった 残されたランカー達は、各々露骨に不満そうな顔をしながらも、その場に皆留まっていた というのも、画面自体は見えないが、バーチャルスペースで戦闘の様なものが行なわれていると思しき音や気配がやまなかったし、ジャッジマシンがいかなる結果もまだ伝えては居なかったからであろう とはいえ、それだけの情報量ではヌルの不安感を拭い切るにはとても足りなかったのであるが 「クイントスさま・・・」 「・・・・・・やはり行く事にしよう」 「え?」 覗き込んだクイントスの表情は硬かったが、どこか嬉しそうでもあった そう言ってクイントスは華墨側のオーナーブースコンパートメントに向かう 「っ・・・待って!私も行く」 会場の誰も、ふたりが抜けた事に気付いていないようだった 明らかな戦力差だったが、ニビルは何とか回避し続ける事が出来た 何故か、使い切った筈の「ゴールドアイ」が復活したからだ それも、いつもより予見が冴えている 同時に判った事は、『ギガンティック』がほぼ「ジェノサイドナックル」「ゴールドアイ」に匹敵する速さと、先読み能力を持っている事であった (かわす事は出来ても反撃は無理ね・・・せめて空戦装備があれば話は違うのだろうけど・・・) 振り下ろされた右腕が大地を割る! 追跡してくる脚力はさながら「ジェノサイドナックル」の脚版だ、歩幅と相俟って、殆ど瞬間移動とも言える速さで移動出来る様だった (駄目、もうかわしきれない!!) 瞬間、『ギガンティック』の動きが止まる 空を見上げる様な仕草をし、どこか、ニビルに見えない遠くを見ている様だった ごつん!! 扉に剣戟で穴を開けて潜入する 強引だが、取り立てて気にした様子も無く、クイントスは佐鳴武士が居た筈のコンパートメントに足を踏み入れた そこに武士は居ない 代わりに、バトルポッドの前に、身長170センチ程の『ギガンティック』が佇んでいた 「!?」 ヌルの驚愕を無視して、クイントスが走る 「会いたかったぞ・・・!!」 ごうっ!! 剣速に音を引き連れて、クイントスの刀が鞘から引き抜かれる その一撃は、これ以上無い程明確に体格差のある『ギガンティック』の爪を一振り斬り飛ばし、刃先には一切血曇りを残さない程だった 怯んだ様子すら無く、ニビルも驚いた「ジェノサイドナックル」ばりの速さで殴りかかる『ギガンティック』・・・それを、クイントスはすんでの所で回避した 外れた拳で床が抉れる 見る迄も無い、神姫が喰らえば全壊は免れ得ない一撃だ・・・恐らく人間でもひしゃげるか、体の一部が捥げるだろう 「まだ自分の体の使い方が判っていないのか・・・?それとも所詮『まがいもの』なのか・・・?そんな程度では」 長い腕の下に潜り込み、合計4撃、極悪無比な音速剣が炸裂する それでクイントスの刀はへし折れたが、同時に『ギガンティック』の五体もバラバラに引き裂かれた 胸から大量の、人間のそれと同じ赤い血を噴き出しながら 「どんな強力な武器を持とうとも・・・それを扱う者が弱者では話にならないという事だな『華墨』とやら」 『ギガンティック』となっていた武士の胸に華墨が浮き上がり、剥離してゆくのがヌルには見えた 『よう華墨、しっかりしろよ』 (マスター?どうしたんだ一体) こんな所でぼさっとしてんなって!ニビルを倒して、クイントスに一泡吹かせてやるんだろ? 『勝とうぜ、俺達二人で!』 (あぁ・・・そうだな、そうだった、二人で勝つんだったな・・・『クイントス』に) そこは暗い奈落の底 漆黒の闇なのか、混沌なのか だが『私』は既に寄る辺無き花ではない 立ち上がり、歩き出す マスターが居てくれる・・・ならば取り敢えず、歩く道は判る だから、私のマスターで居て下さい・・・佐鳴武士 目を開けると、そこはどうもメディカルセンターの様だった 「目が覚めたみたいだね」 振り向くとそこには琥珀嬢とエルギール、それと、ニビルが居た 吹き込んでくる風が、季節の移り変わりを感じさせた どうも、私の認識から季節がずれている様に感じる 違う!季節はそう簡単にずれない、いかに今年は春が短かったからといって、この空気は私が知っている昨日迄と全く違う では、ずれているのは私の認識の方か・・・私の・・・認識・・・? 「マス・・・」 『マスターは何処に?』と聞こうとして、頭に激痛が走った 待て、待て待て華墨、お前は何か重大な事を忘れていないか・・・?何かとても重大で、そしてとても、巨大な何かを!? 「君のマスターは此処に居る、僕だ、僕神浦琥珀が、君のマスターだ」 それで、私の知る限りの全てを思い出した 「佐鳴武士は・・・死・・・」 吐いた 何かを そこで、自分のもうひとつの異常に気付いた 「君はね、普通の武装神姫では無くなってしまったんだよ・・・華墨」 「今の君は、人間とそう変わらない体を持っている、食事をし、排泄をし、呼吸をする体・・・機械と生体のハイブリッド・・・君は・・・」 吐いた、転げ回った 何も聞こえない 何も判らない 聞きたくない!!! 「落ち着きなさい!受け入れ難いのは判るけど!取り乱しても何にもならないッ!!」 ニビルに頬を張られて、動きが止まった 頭の中が真っ白になっていた ただ涙だけは出た 語る言葉も何も無く、ただ、溢れた そしてそれが、他ならぬ私自身に、状況を思い出させていた 「・・・・・・暫く一人にさせてあげよう、ニビル」 出て行く直前に、エルギールが私を見たが、それに対して何かを返す余裕は、今の私には全く無かった 「マスター・・・・・・!!」 その悲鳴に近い声は、涙と共に奈落の底に程近い今の私の心に大きく波紋を浮かべ、虚空に虚しく消えた・・・ 剣は紅い花の誇り 前へ 次へ
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先頭ページ 次へ 目次 インターバトル0「アーキタイプ・エンジン」 「強敵」 「犬達の出会い」 「バトリングクラブ」(上) 「バトリングクラブ」(下) インターバトル0「アーキタイプ・エンジン」 涼しい秋の風が網戸を通って、彼の頬をなでた。 私はたわむれに彼の頬をなでていた空気の粒子を視覚化して追う。 くるりと彼の頭の上で回転した空気は、そのまま部屋に拡散して消えた。 彼はもう一時間ほどデスクに座りっぱなしで、ワンフレーズずつ、確かめるようにキーボードを叩く。彼の指さばきが、ディスプレイに文字を次々と浮かべる。浮いている文字。 その後ろの、ベッドの上に座りながら、彼の大きな背中を見ている。これが私。 私は武装神姫。天使型MMSアーンヴァル。記念すべき最初のマスプロダクションモデル。全世界に数千万の姉妹がいる、そのうちの一人。 パーソナルネームは、マイティ。彼が一晩考え抜いて、付けてくれた名前だ。 私はこの名前に誇りを持っている。 うーむ、と、彼がパソコンチェアの背もたれに寄りかかって、腕を組んだ。再び 涼しい風が部屋に遊びに来る。窓を見る彼。外は快晴。ついで視線に気づいて、私を見る。 彼はくすり、と微笑む。ちょっと陰のある、はにかんだ笑顔。 「おまえは、食べ物は食べられるのかな」 壁の丸い時計をちらりと見て、彼は訊ねた。私に。 「はい。有機物を消化する機能があります。99.7パーセントエネルギー化して、排泄物を出しません」 「いや、それはいいんだが」 彼はちょっと困った顔をして、私はすぐに彼の言わんとしていることを悟った。 「味も識別できます」 「そうか。良かった」 昼飯にしよう、と、彼は台所に立つ。ワンルームの小さな部屋。一つの部屋がリビングとダイニングとキッチンと、仕事部屋と寝室を兼ねる。十畳以上あるから狭くはない。 カウンタをはさんでキッチンが見える。キッチンの横のドアは廊下があり、玄関へと続く。それまでに洗面所経由のお風呂があるドアがあって、玄関に近い方にトイレのドア、と並ぶ。反対側は大きな納戸だ。 カウンタの手前には小さなテーブル。一人暮らしのはずなのに、なぜか椅子が二つある。そのことを聞いてみたら、 「セット商品だったのさ」 と、苦笑した。 いい匂いがキッチンから漂ってくる。ガスコンロの上で、フライパンが踊る。お米と、たまねぎと、玉子、そしてお肉が舞う。 ほどなくして、テーブルに大小二つの皿が置かれて、そこに金色のご飯が乗せられた。 チャーハン。私のプリセット知識が料理の詳細を再生する。 私はテーブルに座らせられて、小さいお皿のほうが手前に寄せられる。 「多いか」 「いえ、丁度良いです」 彼は微笑して、椅子に腰掛けた。 「小さいスプーンがこれしかなかった」 と、彼はプラスチックのデザート用スプーンをくれた。 「いただきます」 私はチャーハンをほお張る。 おいしい。 有機物を摂取するのはこれが初めて。私のコア頭脳に新たなネットワークが築かれているのが分かる。 「おいしいです」 私は心からそう言った。 心、から。 そう。このときに、私が生まれたのかもしれない。初めて。 私は、マイティ。 「強敵」 『不良品』の著者様に敬意を込めて。 なんてこった。強すぎる。 『きゃあああ!?』 タイプ<ゴーストタウン>バトルフィールド内において、おれの天使型MMSアーンヴァル「マイティ」は、空中にいたところを相手神姫に攻撃された。アウトレンジから一方的に射撃することで安心しきっていた マイティは、ビルの外壁を蹴たぐって「跳んで」きた敵と避ける間もなく激突。そのまま失速し地面へ真っ逆さまに落下した。 「体勢を正せ!」 おれはすかさず命令する。ダメージからではなく驚愕に前後不覚に陥っていたマイティはおれの声で平静を取り戻した。神姫スケール換算地上三メートルでマイティはウイングブースターを反転させ、下方への運動エネルギーを強制排除、墜落寸前でホヴァリングした。 頭上から脳天割らんと落ちてきた敵。巨大なアームに握られた「フロストゥ・グフロートゥ」が道路を粉砕。まるで砲弾がぶち当たったようにアスファルトの破片が炸裂する。 マイティはすんでのところで避けていた。十二分に間合いを取る。若干組み替えているとはいえアーンヴァルそのものの優秀な中遠距離戦闘性能は殺していない。離れれば離れるほどこちらにとっては有利になれる。 相手神姫は悪魔型MMSストラーフだった。武装はほぼノン、カスタムに見えるが、一目で分かる最大の特徴――今やあれは特長と呼んだほうが良いかもしれない――があった。 一本足なのだ。性格には右足のみ、悪魔型のレッグパーツを取り付けてある。左足は素体のままで右レッグパーツに添えるだけ。右のレッグパーツはバッタの足みたいな補助シリンダーが装備され、片足以上の跳躍性能を秘めていた。ビルの壁面を蹴り登りマイティのところまでやってこれた正体だ。 決して不恰好ではない。正面から対峙すれば、本当に脚が一本しかないように見えてしまう。もともとが人型であるから、どうも対戦した神姫は生理的な恐怖か嫌悪感のようなものを感じてしまうらしい。 おれのマイティも例外ではなかった。 「片輪の悪魔、か……」 おれは相手神姫とそのオーナーに付けられた通り名を思い出していた。考えてみれば通り名がつくほどなのだから、そいつはめっぽう強いか笑えるほど弱いかのどちらかでしかないのだ。あいつはまず間違いなく前者だった。 まるで神姫と会う前から示し合わせていたように、オーナーの男は左足が、無かった。 『マスター!』 懇願するようにマイティが叫ぶ。命令をしてくれというのだ。しかし、おれは有効な戦術が思いつかない。 「今ので空中も危ないと分かったはずだ。動き回って間合いを取り続けろ」 『は……、はいっ』 有効な安心が得られなかったからか、やや不本意そうにマイティは応えた。 その後もこちらの不利が続いた。動き回れば追ってくるのは近接型のセオリーだが、悪魔のそれはつかみ所の無いトリッキーな動きだった。ビルの壁を利用し、三次元的に追ってくるのだ。そのくせこちらが予測して撃ったはずの弾は例外なくかわす。避けるのではない。弾丸をはじき飛ばしたり隙間を抜けさせたり、並大抵の神姫ではできない戦術を呼吸するようにやってのける。 マイティのコンディションに焦りが見え始めた。先頭の切れ目だ。おれは彼女にアウトレンジ戦法ばかり教えてきたから、突発的な対処にはめっぽう弱い。 悪魔が隠し持っていた拳銃を二、三連射する。マイティのちょうど後ろにあるビルの外壁に当たり、マイティはおののいて急制動をかけてしまった。拳銃は命中させるための攻撃ではなかったのだ。 すかさず悪魔の右アームが背中にまわり、目にも留まらぬ速さで前方に振られた。 「いけない。マイティ避けろ!」 『えっ』 ずがっ マイティの右ウイングが叩き切られた。外壁に刺さっていたのは忍者型の手裏剣。マイティは揚力を失い、墜落した。 『あ、あ……?』 衝撃で動けなくなり、地面に転がるマイティ。 どすん。目の前に悪魔が着地する。とどめを差す気だ。逆手に握られたフロストゥ・クレインを天高く持ち上げる。 『いやぁー!』 マイティの悲鳴。 『そこまでっ。試合終了』 審判側から試合終了の合図。 もちろんおれ達は負けた。マイティはなんとかぶち壊されずに済んだ。 「マスター!」 破損した部品を修理ブースへ預け戻ってくるなり、マイティはおれにしがみついた。体が小刻みに震えている。尋常でない恐怖だったのだろう。 おれは「大丈夫だ、もう大丈夫だよ」マイティの頭をなでた。 「よう、こっぴどく負けたな」 観戦していたらしい神姫仲間の一人が寄ってくる。胸ポケットには彼のハウリンが心配そうにマイティを見つめている。 「惨めなもんさ。見てたのか」 おれは頭を掻きながら、嘆息した。 了 「犬達の出会い」 「……でよぉ? そしたらそのバカの神姫が勢い余って壁にぶつかってやんの。で、目ぇまわして、相手不戦勝」 「はぁ」 「しっかし昨日の、なんだっけ。『片輪の悪魔』は強かったよなぁ。あいつのマイティがこっぴどく負けるほど強いんだぜ? 戦ってみたいよな」 「はぁ」 「……おいシエン、聞いてんのか?」 「へっ?」 やっぱ聞いてなかったか。 オレの神姫、犬型MMSハウリン「シエン」は、あわてて直立。 「も、申し訳ありません、ご主人様。聞いておりませんでした」 「いや、別にいいんだけどよ。なに見てたんだ?」 シエンの後ろには先ほどまでこいつが操作していたパソコン。画面にはおもちゃ屋のページが開いている。なになに……? 「ごっ、ご主人様!?」 すかさずシエンがマウスを操作し、ウインドウを消す。 「おいおい、何だよ?」 「いえ、あの」 「お前にしちゃずいぶん熱心に見入ってたじゃねえか」 「そ、それは」 「いいから。見せてみろよ」 オレはブラウザの履歴を開く。 「でも」 「見せろ。命令だぞ」 その言葉には逆らえず、シエンはその場でうなだれた。うーん、ちょっと卑怯くさかったな。 最新の履歴には「ホビーショップNOVAYA……」とあった。 開いてみると、そこには、 「1/12スコープドッグ復刻版、フルモータライズエディション?」 「あう……」 三十年も前に発売されたロボットのおもちゃを、間接の一つ一つに小型動力を仕込んだ、ラジコン操作が可能なやつだった。 このおもちゃのすごいところは、完全再現されたコクピットの計器・レバーがすべてアクティブだってことだ。武装神姫とのコラボレートを見込んだ機能らしい。 「お前ぇ、こいつが欲しいのか?」 「いや、その……」 「欲しいんだろ?」 「…………はい」 シエンは顔を真っ赤にして、蚊の鳴くような声で答えた。 「なんだよ。だったら言えばいいだろ。これくらい買ってやらんこともねえぞ」 まあ、ン万ぐらいだったらこいつに出しても良いだろうな、という覚悟は決めた。今。 「でも」 「あ?」 「お値段が……」 「値段?」 オレはページを下に少しスクロールした。 「いちじゅうひゃくせんまん……」 うぐ。オレはのどを詰まらせた。そこにはオレの予想を一桁超えた額が、メタリックフォントで燦然と輝いていたのだ。 まぶしいぜ。 「いえ、いいんです。自分は別に」 オレはシエンの顔を見た。申し訳なさそうに見上げるそいつの目。 そのとき、オレの中で何かが切れた。 「買うぞ」 オレは間髪いれずに言ってしまった。なんだか知らないが、買わなきゃいけない気がしたからだ。こいつのために。 「でも」 「いや、買う。これはご主人様めーれーだ」 言葉が間違っている気がする。 「ご主人様……」 「いいんだよ。金もあるし。お前が喜ぶなら、こんくらい」 「あ、あ。……ありがとうございます、ご主人様!」 シエンは満面の笑みでオレに抱きついた。尻尾を千切れんばかりに振っている。おいおい、そんな表情初めて見たぜ? 数日後。神姫の箱を四つ合わせたくらいどデカいパッケージが部屋の真ん中に鎮座していた。 オレとシエンはパッケージの前に正座する。ごくり。おもちゃに対して固唾を呑むのはさすがに初めてだぞ。 いよいよ開封。鉄片から発泡スチロールの梱包材ごと取り出す。とてつもなく重い。きっとおもちゃのガワの中身は動力がぎっしり詰まっているのだ。下手な持ち上げ方をすればぎっくり腰になるぞこりゃ。背筋をまっすぐにして「ふんぬっ」と中身を持ち上げ、シエンが箱をおろす。適当にスチロールを外すと、出てきたのはシエンの二、三倍はあろうかという緑色のロボットだった。 オレは触ってみて重さの正体を知った。重いのは動力のせいだけではなかったのだ。 「全身金属かよ……。これホントにおもちゃか?」 シエンは尻尾をぶんぶん振り回しながら、ほあー、という顔をしてロボット、スコープドッグを見上げていた。こいつにとっては神姫スケール換算四メートル弱の巨大ロボットなのだ(作者注:倉田光吾郎氏製作、一分の一ボトムズを見上げたことのある方はそのときの感情を思い出してください)。 「あの、ご主人様」 「ああ、良いぜ。乗ってみな」 オレは説明書片手にスコープドッグのハッチを開ける。シエンを持ち上げて乗せようとしたが、 「自分で乗ります」 と言って歩み出た。なるほど、昇降用の手すりや出っ張りがちゃんとあるのか。三十年前のおもちゃにしてはよくできたデザインだと感心する。シエンは乗り込む楽しみも味わいたいようだった。その気持ちはオレも良っく分かる。 シエンが自分でハッチを閉める。中でなにやらカチャカチャしていると思ったら、突然ロボットのカメラアイが「ヴゥーン」という電気音を立てて光りだした。 「うわっ!?」 オレはびっくりして引いてしまう。 主動力らしいエンジン音のようなグングンという音が鳴り始める。 ガシャン。スコープドッグが最初の一歩を踏み出した。 「シエン、大丈夫か!?」 スコープドッグのバイザーが上に競りあがる。頭の穴からシエンの顔が見えた。 「問題ありません。動きます。すごいです、ご主人様」 「そ、そいつは良かった……」 シエンを載せたスコープドッグが部屋の中を歩き回る。時折腕を回したり、いらない段ボールに向けてアームパンチを繰り出したり。うわ、ダンボールが破れた。どんだけ強力なんだ? ローラーダッシュのスピードは俺の狭い部屋じゃ速すぎる。やめろピックを打ち込むな、ターン禁止!! あーあ、床がへこんだ。こりゃあただのおもちゃじゃないぞ? いやしかし。オレも乗ってみてぇ……。 「ん?」 説明書のほかに妙なチラシが入っている。店側が入れたやつだろうか? チラシにはこう書かれていた。 『武装神姫in装甲騎兵ボトムズ・バトリングリーグ&トーナメント 近日開催!!』 オレはもう一度、シエンの動かすスコープドッグの方を見やった。 了 「バトリングクラブ」(上) 「ここか」 「……みたいですね?」 おれとマイティ――天使型MMSアーンヴァル――は、すえた臭いの立ちこめる場末の会員制クラブの入り口にいた。 なぜおれがこんなところにいるかというと、彼から招待状が届いたからだ。 彼――犬型MMSハウリン「シエン」のオーナー――は、 「いいから来い。面白いモンを見せてやんよ。来なかったら私刑」 と言って、半ば無理やりおれを呼び出した。私刑は誤字ではない。 おれは正直怖気づいていた。いや、私刑にではない。 そもそもおれはこんないかにも治安の悪そうな場所に自分から赴くような人間ではない。 なにより今はマイティを連れている事がおれをためらわせた。が、彼の「大丈夫だから」 という言葉を信じてやってきた。 とりあえずからまれることもなく無事に現地へ着いたわけだ。玄関先の巨漢の黒人に 招待状を見せる。 「ドウゾ、オハイリクダサイ」 片言の日本語だが、やはり威圧的な空気は篭っている。目の前にいるのはまったく場違いな人間なのだ。無表情な中から怪訝そうな感情がにじみ出ていた。 ウェイターに案内され、控え室の一つに通される。クラブであるはずなのにホールでは誰も踊っていなかった。何かを待っているようだった。そういえば真ん中のお立ち台には頑丈な金網が回されてあったが……。 「よお、来たな!」 出されたキツイ酒を飲んでいると彼が現れた。 「お前はこんなところにいても違和感ないよな」 おれは彼の茶髪やヒゲやピアスを見ながら言った。 「なんだそりゃ。まあいいや。ようこそ。バトリングクラブへ」 「バトリングクラブ?」 「シエン、入って来い」 『了解です、ご主人様』 妙にくぐもった声だなと思う間もなく、スコープドッグが入ってきた。 あのスコープドッグだ。ボトムズの。なぜか頭部が真っ赤に塗られている。 「シエンちゃん!?」 マイティが俺の懐から飛び出した。シエンが無骨な戦闘ロボットになってしまったと 思ったのだ。 「久しぶり、マイティ」 ハッチを上げて、中からシエンが出てきた。素体のままではなく、専用の対Gスーツを 着ている。頭には同梱の頭甲・咆皇にモニターゴーグルを取り付けていた。 「どうしたの、このロボット?」 「ご主人様に買ってもらったんだ」 なんだって? 「お前買ったのか、このバイクが買えるくらいのやつを?」 「買った。シエンの為だからな」 ある意味、こいつはおれ以上の神姫ラヴァーかもしれない。 「バトリングってのは、やっぱりボトムズのだったんだな」 「そうだ。オレはここで、パートナーをやらせてもらってる」 「誰と?」 「ここのチャンピオンとさ。もうすぐ試合があるんでそろそろ、……来たな」 ドアが開く。 そこには気さくそうな眼鏡の青年が立っていた。チェックのワイシャツにチノパン。おれよりも場違いな人間だった。 「やあ、君が『屍ケン』のご友人だね」 「屍ケン?」 「オレのリングネームさ」 「僕は舎幕(しゃばく)。リングネームは『青の騎士』だ。よろしく」 「あ、ああ。よろしく」 俺はごく自然に舎幕と握手していた。細い手だった。 「僕の神姫とATを紹介しよう。ライラ、入っておいで」 入ってきたのはスコープドッグよりもひとまわり大きな、青いロボット。 「僕のAT、ベルゼルガだ。パイロットは兎型MMS『ヴァッフェバニー』のライラ」 ハッチが開いて、中から完全武装の――とおれが思ったのは、その神姫がガスマスクと ゴーグルを付けていたからだ――神姫が出てきた。 『コーホー、コーホー……』 「ライラ、控え室にいるときぐらいはマスクを取りなさい」 『……ラジャー、オーナー』 渋々その神姫が素顔を見せた。 「……ライラです」 それだけか。愛想の無い神姫だ。 しかし人懐っこいマイティはすぐに寄っていって挨拶をしている。 「舎幕、時間だぜ」 彼――屍ケンが呼ぶ。 「ああ、そうだね。挨拶だけですまない。これから試合なんだ」 「いや、いいんだ」 「オマエには特等席を用意してあるぜ。楽しみにしてな」 そうして俺たち一人と一体は、その特等席とやらに通された。 思ったとおりあのお立ち台はバトルリングであり、特等席とはそのまん前、最前列であった。 「レィディースえ~んどジェントルメェン! ようこそ、クラブサンセット、武装神姫in装甲騎兵ボトムズ・バトリングマッチへ! 今宵もクラブチャンピオンの座を賭けたアツいバトルの始まりだ!」 司会のスタートコールにホールに集まった観客が歓声を上げる。 「まずは我らがチャンピオンタッグの紹介だ。」 リングの東方、おれのいた控え室の方向へ司会が手をかざす。 「チャンピオンの愛弟子! 幾度と無く敗れてなお、立ち上がってきたアンデッドマン。屍ケン&「ハウリン」シエン!」 フードを被った彼が、プッシング・ザ・スカイのBGMとともに登場。肩に立ったシエンが観客に手を振る。彼女のファンらしいグループが「シエンちゃーん!」と黄色い声。 「シエン‘sAT、ムダな装甲を限りなくそぎ落としたライト・スコープドッグ、『クリムゾンヘッド』!」 彼の後ろからハッチを開けた無人のスコープドッグがローラーダッシュで入場。彼の肩にいたシエンは跳躍、コックピットに見事着地し、ハッチを閉め、そのままリングへ登壇した。 「そして我らがクラブチャンピオン。並み居る挑戦者を華麗に撃破し続けるハンサムボーイ。青の騎士・舎幕&「ヴァッフェバニー」ライラー!」 青年舎幕が控え室そのままの姿で登場する。やっぱりどこかの理系の大学生にしか見えない。 ライラはどこだ? 「ライラ‘sAT。どんなATもその巨体にはかなわない。ヘヴィ級アーマードトルーパー、『ベルゼルガ』!」 ブルーの巨体が舎幕の後方からローラーダッシュしてくる。もうライラは乗り込んでいるようだ。 どうやら彼女は人前で素顔を見せたくないらしい。 挑戦者の紹介が始まった。 「今宵のチャレンジャー。都内各地のバトリングクラブを潰しまわって十二件。息のぴったり合ったユニゾン攻撃は相手を混乱の渦へと叩き込む。バックス兄弟、そして「ストラーフ」マリア&ミソラ!」 バックス兄弟? どう見ても日本人じゃないか。屍ケンより格段にガラの悪そうな連中だった。 たとえるなら、徒党を組んでカツアゲでもしていそうな連中だ。おれなら絶対に関わらない。 連中の神姫はそろってストラーフだったが、おれは妙な違和感を覚えた。 目に神姫特有の生気が宿っていないのだ。 「あのストラーフたち、感情回路を外されてます」 マイティが寒そうに胸をかき抱きながら言った。 「どうなるんだ?」 「ただのロボットになってしまうんです。マスター、あの、少し抱いていてください」 「ああ……」 おれはマイティを両手で包んだ。 無理も無い。あのストラーフたちの姿は、彼女らにとっては脳みそをいじくられているも同義。 痛々しい姿をマイティは見ていられないのだ。おそらくシエンとライラも同じ気持ちだろう。 「おい、舎幕」 「ああ。分かってる。倒すさ」 二人はそう打ち合わせた。 挑戦者のATは、黒いストロングバックスの背中にストラーフのアームユニットを二対も取り付けていて、さながら阿修羅のような格好だった。カメラは人間の目のようなステレオスコープ。 ルールは白兵戦武器も使わない肉弾戦のみの限定ブロウバトル。 ゴングが鳴った。 つづく 「バトリングクラブ」(下) ◆viewpoint change… “おれ”→”3rd person” リングは正八角形の平面で、直径は10メートル前後。1/12のATが悠々と走り回れる広さになっている。 「どちらかのATがすべて行動不能になった時、試合終了とします。それでは、レディー……ファイッ!!」 ゴングが鳴らされた途端、四体二組のATはそれぞれローラーダッシュを全力でかけ突進した。 いち早く飛び出たのは屍ケン、シエンのクリムゾンヘッド。頭部が真っ赤に塗りたくられたライトスコープドッグは、異常なまでに良好な出力重量比をもって機動する。 コックピット周辺を中心に可能な限り殺ぎ落とされた装甲は、駆動限界ギリギリまで迫る。重量軽減のために左腕のアームパンチさえオミットしているのだ。 「そんなにガリガリで、俺様のマリアに真正面から挑むのか、死にたがりめ」 ほくそ笑む、バックス兄弟の兄。 「ぶっ潰しちまえ、マリア!!」 『了解』 ひどく無機質な応答があり、「ストラーフ」マリアの阿修羅ストロングバックスがステレオスコープの両目を真っ赤に光らせ相対する。本体のと合わせ計六対のアームユニットが開かれ、迫るクリムゾンヘッドを殴り潰さんとランダムに飛来した。 さながら他弾頭ロケットの着弾である。掛け声を付けるなら「オラオラオラオラ」あるいは「無駄無駄無駄無駄」だが、あいにくパイロットの神姫は感情回路が無いためそんな気の利いた気合は出さない。 しかし、クリムゾンヘッドは当たらない。超軽量のボディはATらしからぬアクロバットな回避を簡単にこなすことができる。スウェー、ステップ、側転を織り交ぜ、機関銃のように繰り出されるパンチの雨を避け続ける。避けられたパンチはリングの床をえぐった。 「こりゃ負けたほうが弁償だぞ」 カウンターのバーテンダーがぼそりと呟いた。 『遅い!』 クリムゾンヘッドはついにマリア阿修羅STBの懐へ到達。唯一の武装である右手のアームパンチに気爆薬を装填、相手の胸部装甲へまっすぐに叩き込んだ。 マリア阿修羅STBが吹っ飛ぶ。が、すぐに体勢を整え着地。ストロングバックスは通常のスコープドッグよりも前面装甲が分厚い。1/12といえどその特性は変わらない。ダメージが思ったほど通っていない。 『ちっ』 シエンはコックピットの中で舌打ちした。 「ドン亀が! やっちまえミソラ!」 『了解』 ミソラ阿修羅STBはベルゼルガにターゲットを合わせた。ローラーダッシュでもさほどのスピードしか出ないへヴィ級ATベルゼルガを捉えるのは容易い。 あっという間に間合いを詰め、二対のアームでがっしりと青い巨体をホールド。両のアームパンチを連打する。 「はぁっはっはっは! さすがの青の騎士もこいつはキくだろう!」 「ベルゼルガを甘く見ないで欲しいね」 舎幕はふふと笑うと、自身の神姫に命令を下した。 「ライラ、思いっきり痛めつけてやりなさい」 『ラジャー、オーナー』 ベルゼルガの図太い腕がミソラ阿修羅STBを挟み込んだ。 「何ィ!?」 そのまま、なんとベルゼルガはストロングバックスを軽々と持ち上げたのだ。 『ふんっ』 気張って一発。投げ飛ばした。マリア阿修羅STBの方向へ。 二体の阿修羅は激突し、リングのすみへ転がった。 ベルゼルガの装甲は擦り傷さえあれ、少しのへこみも見当たらなかった。 ウォォォォォォォォ ギャラリーの吼えるような歓声。スタンディングオベーション。 「すごいな」 「はい……」 マイティたちは唖然としてリングの攻防を見つめていた。 「もう君たちの負けだ。僕らには勝てないよ」 冷静な顔で舎幕が言った。こんな台詞なのに、決して気取らない、チャンピオンの風格。 「こンの小僧があぁ……」 「兄貴、やっちまおうぜ」 バックス兄弟はリングの中へ何かを次々に投げ込んだ。 阿修羅たちがそれをキャッチ、六本のうでに装備する。 スコープドッグの標準装備、ヘビーマシンガンだった。それぞれ六丁ずつ。大型のマガジンを搭載してある。 「リアルバトルに変更かい」 「そうくると思ったぜ」 舎幕、屍ケンも投げ込んだ。ただしそれぞれ一つずつ。 クリムゾンヘッドが肩に背負ったのは、見覚えのあるキャノン砲。 ハウリンの同梱武装、吠莱壱式だ。 ベルゼルガのもとには、胴体部分をくまなく覆えるような大盾が落ちてきた。中心部分には針のようなものが通っている。 「出たぞ! ベルゼルガの必殺武器、パイルバンカーだ!」 司会が待ってましたとばかりに叫ぶ。 リングをリアルバトル用の強化透明プラスチック壁が覆う。ルールはリアルバトルに変更された。 銃火器使用可能、実戦さながらの無制限バトルである。銃火器と言ってももともとはマーキング弾が飛ぶおもちゃだが、リアルバトル用の銃器はだいたいATの装甲を貫けるように改造されている。小口径と言えど銃弾が飛んでくるようなものだから、リアルバトル時にはこのような専用の防護壁がリングもしくはバトルエリアを覆うのだ。 「シエンちゃんたち、大丈夫かな……」 マイティが心配そうにマスターに聞く。 「まあ、問題は無いと思うが。あの二人の表情を見てみろ」 マスターは屍ケンたちを指差した。 「楽しそうじゃないか」 バックス兄弟は声をそろえて自らの神姫に命令した。 「蜂の巣にしてやれァ!」 『了解』 合計十二丁の銃口が向けられた。 爆音。 目がくらむほどのマズルフラッシュがリングの一角を支配した。 ベルゼルガは大盾を構えて防御の体勢をとる。クリムゾンヘッドはローラーダッシュを最大出力にし、真横に避けた。 クリムゾンヘッドの通った壁にペレットの雨あられが着弾する。壁は二重構造で絶対に貫通することは無いが、その後ろにいる観客は恐怖にかられてのけぞった。 吠莱壱式が文字通り吠える。大口径の砲弾は連射能力こそないが、移動間射撃にもかかわらず相手のマシンガンを一丁ずつ、的確に撃ち落してゆく。 最後の一丁になったとき、弾丸が切れた。吠莱壱式の方だった。このときの間合いはAT二体分しかなかった。 「ぶっ殺せ!」 容赦なく、マリア阿修羅STBは撃った。照準はコックピット。 「シエンちゃん!!」 マイティが乗り出して悲鳴を上げる。 撃たれたとほぼ同時にコックピットハッチが開放された。マシンガンの弾は誰もいないシートに穴を開けた。 ほとんど素体のままのシエンが飛び出していた。右手には同梱武装の十手が逆手に握られている。 「うおおっ!」 シエンはマリア阿修羅STBの頭頂部めがけて、十手を突き刺した。落下の勢いが加算され、刃物でないはずの十手が頭部装甲を貫通した。シエンはマリアのコアユニットをつぶす手ごたえを感じた。シエンは哀れむべき同族を楽にしてやった。 ミソラ阿修羅STBの一斉射は、ベルゼルガの大盾に勝てなかった。 「くそう、くるな、くるなよお!」 バックス弟は涙目でがなりちらす。 ゆっくり、ゆっくりと、大盾を構えたベルゼルガは近づいてゆく。 ついに六丁のマシンガンが沈黙した。 ベルゼルガは緩慢な動作で大盾を引く。中心のパイルが後退してゆく。 『許せ』 一撃。 ストロングバックスの胸部装甲を、ベルゼルガのパイルバンカーが貫いた。斜め下方から侵入したパイルは、ミソラのコアユニットを破壊しながら、ATの後頭部まで到達した。 「試合終了! 勝者は屍ケン&青の騎士、チャンピオンチーム!!」 今迄で一番大きな歓声が上がった。マスターとマイティは耳を押さえた。 試合終了後にブチ切れた兄弟がナイフを振り回して舎幕らを襲おうとしたが、門番の巨漢の黒人、ボビーに「きゅっ」と締め落とされ、放り出された。 「ありがとう、ボビー」 「オ仕事デスカラ」 ボビーは門番に戻っていった。 ◆ ◆ ◆ 「やっぱり、こっちには来ないのか?」 屍ケンが寂しそうに言った。 「悪いがあんな危険な試合はできない。マイティを戦わせるのは神姫だけで十分だ」 マスターは答えた。 「そうか……。まっ、そう言うとは思ってたけどな」 「だがいい試合だった。あのストラーフの二人も浮かばれるだろうな」 「へっ……」 「じゃあな。おれはこれで」 「なあ」 「ん?」 「お前ぇ、リベンジするんだろうな。あの片足の悪魔に」 「……」 マスターはあごに手を当てて空を見ていたが、ややあってこう言った。 「考えておくよ。マイティ、帰るぞ」 「は、はい。……じゃあね、シエンちゃん」 「ああ。またな」 こうして二組のオーナーはそれぞれの戦いへと身を投じることになる。 それはまた、別のお話。 了 先頭ページ 次へ